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注目判決・裁決例(東京地裁令和2年2月25日判決)

2021年06月21日
処分禁止の仮処分がなされていた土地も「特別の事情」は認められず
東京地裁令和2年2月25日判決
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相続発生時点において処分禁止の仮処分がなされていた土地を相続した相続人が、評価通達にはより難い「特別の事情」があるとして路線価評価の50%相当額で申告したところ、税務署から否認された。東京地裁は、相続発生後に仮処分に係る登記が抹消されていることから、土地を取得した者等が保全取消しを申し立てることができ、その申立てが認められた蓋然性は相当高かったと判断。「特別の事情」があったとはいえないとして課税庁の処分を適法と認めた。
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被相続人甲は平成25年に死亡し、妻と子2人が甲の財産を相続した。
甲は生前の平成21年6月、母乙からA土地の贈与を受けた。ところが乙はその数週間前に保佐人の選任をする旨の審判をしていたことから、その後選任された乙の保佐人は、甲へのA土地の贈与について処分禁止の仮処分を申し立て、東京地裁は平成22年12月に仮処分決定をした。
さらに乙は平成23年2月、A土地の贈与契約は無効又は取り消されるべきものと主張して、所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えを提起。東京地裁は、A土地贈与契約は無効であるとの判決を下した。ところがその後、甲の控訴を受けた東京高裁判決でA土地贈与契約の無効判断が覆され、最高裁も乙の上告を棄却した。
その後、甲は死亡。死亡後の平成25年11月に、処分禁止の仮処分に係る登記が抹消された。
甲からA土地を相続したXは、相続発生時点においてA土地には処分禁止の仮処分がされていたことから、評価通達に定める評価方法により難い「特別の事情」があるとして、通達評価額の50%相当額で評価した上、申告した。これについて豊島税務署長は平成29年7月、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。Xはこれを不服として提訴に及んだ。

裁判でXは、処分禁止の仮処分がなされていたA土地は、一般市場の取引通念では、これを買い受けても仮処分債権者に対抗できず、排他的な所有権を取得できないと認識されるから、通常の買主はA土地を取得しようとは考えないため、路線価方式など画一的な評価通達による評価方法では適正に評価することはできない、と主張した。

東京地裁はまず、処分禁止の仮処分に係る債務者、その一般承継人及び対象物の承継人は、仮処分命令に係る登記を抹消するため、保全命令発令後の事情変更を理由として保全取消しの申立てをすることが可能であると指摘。
本件においても、甲やA土地を取得した者は、被保全権利を否定する判決があったことを理由として事情変更による保全取消しを申し立てることができたといえ、東京高裁が贈与契約により乙から甲へA土地の所有権が移転している旨の判決をしていたことを踏まえると、保全取消しの申立てが認められた蓋然性は相当程度高かったと認めた。
そうすると、相続発生時点においてA土地につき処分禁止の仮処分がなされていたことは、A土地の客観的交換価値を評価するに当たり、評価通達により難い「特別の事情」に当たるとはいえないと判断。Xの請求を棄却した。