お問い合わせ

  • 〒101-0032
  • 東京都千代田区岩本町1-2-19
  • 株式会社日本法令 ZJS会員係
  • 会員直通:03(6858)6965
  • FAX番号:03(6858)6968
お電話での受付時間
平日 9:00~12:00
  13:00~17:30

お問い合わせはこちら

SSL グローバルサインのサイトシール

このシステムは、SSL(Secure Socket Layer) 技術を使用しています。ご入力いただいたお客様情報はSSL暗号化通信により保護されております。SSL詳細は上のセキュアシールをクリックして確認することができます。

Article

注目判決・裁決例(東京地裁令和2年10月9日判決)

2021年10月05日
農地の評価で「評価通達により難い特別の事情」があると判断
東京地裁令和2年10月9日判決
---------------------------------------------------------
農地を相続した納税者が相続税の申告後、鑑定評価に基づき評価を減額する旨の更正の請求を行ったところ、税務署から「評価通達に基づく評価が適正」として否認された。
東京地裁は、本件土地に係る宅地造成費等を換算すると、旧評価通達における広大地評価等の減価額を著しく超える費用を要すると認められるため、評価通達により難い特別の事情があると認め、納税者の請求を全部認容した。
---------------------------------------------------------
Xは被相続人甲の死亡によりA農地(地目:畑、地積:1,461平米)を相続し、法定申告期限内に相続税の申告をした。
その後の平成28年4月、Xは鑑定評価に基づき、A農地の評価額を571万円に減額する更正の請求を行った。これに対し荻窪税務署長は、評価通達に基づき、A農地を2,172万円と評価することを前提に課税処分。Xはこの処分を不服として、訴えを提起した。

争点は、A農地の評価につき評価通達により難い特別の事情があるか否か。
Xは、A農地は無道路地で、東・南・西側は生産緑地のため道路を開設できず、宅地転用するためには北側への道路開設を要するが、その造成工事費用、買収費用、買収対象土地の境界確定費用等で計約5,604万円かかり、これは「広大な市街地農地等の評価」(旧評価通達40-2)や「広大地の評価」(旧評価通達24-4)の定めが想定する程度を著しく超えるため、評価通達により難い特別の事情があると主張した。
一方、国側は、(1)開発予定地の権利者の相当数から道路開設の同意を得れば、買収することなく開発許可を受けることができること、(2)X側の鑑定評価は任意の1業者からの見積金額にすぎず、妥当性を有するか明らかでないこと、(3)評価通達により難い特別の事情の有無について実際に必要な通路開設費等と比較すべき額は、通路を開設すべき建築基準法上の道路に敷設された路線価等を基に評価した場合の広大地補正による減価額とすべきであり、そうするとX主張の見積金額は広大地減価額を上回るものの、妥当性を有するかは必ずしも明らかでないこと――等により、評価通達が想定する程度を著しく超える宅地造成費等を要するとはいえないと反論した。

東京地裁は、A農地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の路線価に広大地補正をした場合の減価額は約2,053万円であるとし、実際に宅地開発するために必要な宅地造成費等がこの減価額を著しく超えるものであれば「評価通達により難い特別の事情」があると解されると指摘。
その上で、A農地を宅地として造成するのに必要な費用は約5,059万円で、これを評価通達ベース額である80%に引き直すと約4,047万円になり、これは評価通達の定めが想定する約2,053万円を著しく超える金額であるから、評価通達により難い特別の事情があると認めるのが相当と判断。原告の請求にはすべて理由があるとして認容した。