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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成29年7月14日裁決)

2018年04月16日
役員給与が半額以下になっても「退職」とは認めず
平成29年7月14日裁決
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創業社長が役員退任に当たり、給与を半額以下に下げたものの、「実質的には退職していない」として否認されたケースの国税不服審判所裁決が明らかになった。通達の形式基準を満たしていても、「退職の事実」はあくまで実質で判断することが明示された事案だ。
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金属スクラップ業を営むX社の創業社長・甲は、平成17年ごろから病気がちになった。平成22年に病気が再発したため、治療に専念すべく平成23年5月に代表取締役を辞任。長女のA子に後任の代表取締役に、A子の夫・B夫を取締役に据え、自身は代表権のない取締役会長に退いた。同月の臨時株主総会で甲への退職慰労金の支給決議が行われ、同事業年度のX社の決算・申告において損金処理された。
ところが、X社に長年勤務していた元取締役・K所長の横領が発覚、解雇したことに加え、B夫が取引上の失敗を犯したことから取締役を解任されたため、甲はやむを得ず平成27年7月に代表取締役に復帰。
その後、X社に対する税務調査をもとに、原処分庁は「甲が分掌変更後もX社の経営に関与しており、退職の事実は認められない」として、更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分等を行った。

審査請求でX社は、「甲の分掌変更後の役員給与は、分掌変更前に比べ55%減額している」ことを強調。法人税基本通達9-2-32(役員の分掌変更等の場合の退職給与)によれば、「次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる」として、その(3)において、「分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと」と、「おおむね50%以上の役員給与の減額」を挙げており、本件の場合は明らかにこの要件を満たしているため、「退職」に該当すると主張した。
ただし同通達ではカッコ書きで、「その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められるものを除く」と除外要件を示している。本件についても、この「法人の経営上主要な地位を占めていたかどうか」がポイントになった。

審判所は判断において、甲が分掌変更後も以下のように行動していたことを指摘した。
(1) 近隣対策費の支出を、A子らに相談することなく独断で決定した。
(2) 他の事業者からの「流れ屑」の評価や購入するかどうかの承諾を行っていた。
(3) 取引先の幹部の接待や金融機関との折衝を行っていた。
(4) 取締役会に出席し、役員給与の決定や人事に関与していた。
(5) 1億円超の事業用資産の購入決定に関与していた。
(6) K所長等の解雇の決定に関与していた。
(7) X社の経費の支出状況を監視していた。
これらの事実から、甲が分掌変更後もX社の経営上主要な地位を占めていたと認定。実質的に「退職」とは認められず、支払われた退職慰労金は役員賞与と認めるのが相当と判断した。