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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成29年7月26日裁決)

2018年05月22日
矯正歯科医院の収益計上時期をめぐってトラブル
平成29年7月26日裁決
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歯列矯正は、一般的に治療の開始から終了まで4年以上かかる。その間、矯正そのものの費用や通院時の診療費がかかってくるわけだが、歯科医院側はどのように収益を計上すればよいのか? 今回明らかになった審査請求事例では、歯科医院側は「診療費の支払があった時」、課税当局側は「請求金額等が記載された書面を患者に交付した時」と、収益計上時期をめぐって真っ向から意見が対立した。
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歯科医院を営むXは、以下のような順序で歯列矯正の治療業務を行っていた。
(1) 治療内容の説明、口腔内の確認、問診、レントゲン撮影、歯の型取り、口腔内の精密検査
(2) (2週間後)歯の模型やレントゲン写真を使い、治療方針の説明。この時、矯正治療費、振込先、予定治療期間等を記載した書面を患者に渡し、治療開始前に署名・押印して提出するよう要請(分割払を希望する場合はその旨も記入)。
(3) 歯列矯正装置の装着:治療開始(2年間。月1回矯正装置の調整)
(4) 矯正装置の取外しと保定装置の装着(2年間。3~6カ月に1回保定装置の調整)
(5) 保定装置の取外し:治療終了
なお、矯正治療費以外の検査料や再診に係る費用はその都度請求。また、治療を中止した場合、治療費は一定割合返却するが、患者都合の場合は返却しないこととなっていた。

Xは、矯正治療費について、(イ)その年中に一部でも支払を受けた場合、その全額を「自費診療収入勘定」に計上、(ロ)同年中に一切支払がない場合、全額を収入に計上しないという方法で経理処理を行い、平成26年分の事業所得の確定申告を行った。
1年後の平成28年3月、Xは上記(イ)の金額のうち未収となっている金額を総収入金額に計上したことは誤りとして、更正の請求を行ったものの、原処分庁は、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったほか、「上記(ロ)の金額についても総収入金額に計上すべき」として更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分を行った。

審査請求における争点は、「矯正治療費に係る事業所得の総収入金額に収入すべき時期」だが、具体的には、国税庁質疑応答事例「歯列矯正料の収入すべき時期」で明らかにされている取扱いのうち、どれに該当するかということ。
すなわち、(1)矯正装置の装着など一定の役務の提供を行った時に基本料等の全額について請求し受領することとしている場合には、基本料等の全額についてその一定の役務の提供を了した日、(2)期間の経過又は役務の提供の程度等に応じて、所定の基本料等を請求し受領することとしている場合には、その期間が経過した日又はその役務の提供を了した日、(3)(イ)支払日が定められている場合にはその支払日、(ロ)支払日が定められていない場合には支払を受けた日、(ハ)支払日が矯正治療を完了した日後とされているものについては、矯正治療を完了した日――のどれに該当するかについて、原処分庁は(1)、つまり書面を患者に交付した日と主張し、Xは(3)の(ロ)、つまり一括又は分割により支払を受けたそれぞれの日と主張した。

これについて国税不服審判所は、Xと患者との間で交わした書面、つまり契約の実態に着目。矯正治療費は一定の返却率で返却され、患者都合の場合は返却されないことから、各自の診療開始時(つまり矯正装置の装着時)に支払われることが前提となっていると指摘し、矯正装置装着時において報酬請求権が確定すると認めた。
つまり、矯正治療費の収益計上時期は「診療の開始時:矯正装置の装着時」とするのが相当と判断。原処分庁、Xともにその主張が斥けられた。