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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成29年10月16日裁決)

2018年06月28日
担保以外の財産の滞納処分は不可として全部取消し
平成29年10月16日裁決
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国税を滞納した納税者の財産を滞納処分するに際し、担保とはなっていなかった建物も一括して処分できるか否かが争われていた審査請求事案で、国税不服審判所は「担保物件の処分見込額が滞納国税額を上回っている場合には、担保以外の財産についての差押えはできない」として、原処分庁の処分を全部取り消した。
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納税者Xは、平成8年に相続税の延納を選択。土地Aと建物Bを担保として設定し、20年間にわたり支払うこととした。
翌平成9年、Xは土地A上に物置Cを築造した。
その後、Xが年賦納付の相続税の支払いを滞納したことから、税務署は平成25年1月にXに督促。その後も支払いがなかったため、税務署は同年10月に延納許可取消しを行い、さらに11月、滞納国税を徴収するため土地A、建物Bを差し押さえた。
平成27年6月に税務署より徴収の引継ぎを受けた原処分庁は、平成28年7月に物置Cを差押処分した上で、差押登記を行った。Xは「物置Cは担保となっておらず、差押処分を受けるのはおかしい」として、審査請求に及んだものだ。

今回争点となったのは、国税通則法52条4項の次の規定だ。

(担保の処分)
第52条 (略)
4 第1項の場合において、担保として提供された金銭又は担保として提供された財産の処分の代金を同項の国税及び処分費に充ててなお不足があると認めるときは、税務署長等は、当該担保を提供した者の他の財産について滞納処分を執行し、また、保証人がその納付すべき金額を完納せず、かつ、当該担保を提供した者に対して滞納処分を執行してもなお不足があると認めるときは、保証人に対して滞納処分を執行する。

今回のケースでは、土地A・建物Bの処分見込額が明らかに滞納国税の金額を上回っていた。つまり、国税通則法52条4項が規定する「なお不足があると認めるとき」には該当しない。
しかし原処分庁は、「なお不足があると認めるときには該当しなくても、物置Cの差押処分は認められるべき」と主張した。

原処分庁の主張の根拠となったのは、民法389条1項の「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる」という条文だ。物置Cはまさに担保設定後に築造されたのであり、この規定に照らせば、他の担保処分不動産と一括して公売に付すことが認められるべきとした。
また、土地A・建物Bを公売に付して売却した場合に、物置Cは敷地利用権がない状態で残存してしまうことになるし、登記もされていないので所有権の帰すうが判然とせず、買受人は処分に煩雑な手続を強いられてしまうということも、物置Cを差押処分できる理由だとした。

これに対し審判所は、まず、物置Cの差押処分時において、処分見込額が滞納国税額を上回ることは明らかであり、物置Cの差押処分は、国税通則法52条4項の「なお不足があると認めるとき」になされたものとは認められないから、本件差押処分は違法と判断した。
また、原処分庁の主張する民法389条1項の規定は、民事執行における競売手続において、土地利用権のない建物の存続を図る形で売却することにより社会経済的損失を回避するとともに、競売手続の円滑な運営を目的として、土地の抵当権に内在する換価権を建物に拡大したものと解され、この要請は滞納処分における公売手続においても当てはまる、と指摘。
しかしながら、その場合であっても、抵当権の設定後に抵当地に築造された建物を抵当地とともに公売するための差押えは、担保権の実行である以上、国税通則法52条1項に基づく担保物処分のための差押えとして行うものであり、国税徴収法47条1項1号に基づく滞納処分の執行として行うことはできないと解されるとして、原処分庁の主張を一蹴した。