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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成29年12月13日裁決)

2018年07月05日
同族会社の第二次納税義務――国側の株式評価は時価ではなく無効と裁決
平成29年12月13日裁決
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税金を滞納したことによる第二次納税義務が保有株式の発行会社に課された事案で、その株式の評価が「適正な時価」を反映しているのかどうかが争いとなった。原処分庁は、納付告知処分直前の決算による貸借対照表等の数値をもとに評価したのだから適正だと主張したが、国税不服審判所は「客観的な時価を算出すべきだ」として原処分庁の処分を全部取り消した。
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X社は、発行済株式総数2万7,330株の同族会社だ。そのうち2,000株を保有する株主Mと2,500株を保有するNの2名が平成17年、18年分の所得税を滞納。国税当局側は2名が持つX社の株式を差し押さえ、複数回公売に付したものの、買い手は付かなかった。
国税当局はその後、やむを得ず平成27年に滞納処分の執行を停止し、平成28年にX社に対して第二次納税義務の納付告知処分を行った。
X社はこの処分を不服として、審査請求に及んだ。

同族会社の第二次納税義務は、国税徴収法35条に規定されている。すなわち、滞納者が同族会社の株式を有する場合、その有する株式の価額の限度において、その会社は第二次納税義務を負う。
したがって、本件の場合はX社の発行済株式総数に占めるMとNの保有株式数の割合を限度額として第二次納税義務の告知を受けたわけだが、X社は原処分庁側の株式の評価方法が誤っているとクレームを付けた。

原処分庁は、納付告知処分を行った平成28年7月8日の直前期であるX社の平成28年3月期の決算書、貸借対照表、財産目録等を参考に純資産額を算出した上で限度額を計算しているわけだが、X社によればそれは「簿価純資産」を基準とした価額であり、客観的交換価値を反映した時価ではなく、相当ではないと反論。X社の貸借対照表には、回収不能な関係会社に対する債権や債務超過会社の投資有価証券が含まれており、これらを踏まえて評価しなおすと、貸借対照表は債務超過になる。
つまり、X社の株式は0円で、第二次納税義務の限度額も0円になると主張した。

同族会社の株式の価額について審判所は、国税徴収法35条2項の規定に注目。

2 前項の同族会社の株式又は出資の価額は、第32条第1項(第二次納税義務者への告知)の納付通知書を発する時における当該会社の資産の総額から負債の総額を控除した額をその株式又は出資の数で除した額を基礎として計算した額による。

ここでいう「資産」とは「金銭に見積もることができる経済的価値を認識できる全てのもの」を指し、「負債」とは「納付通知書を発する時までに債務が成立し、その債務に基づき具体的な給付をすべき原因となる事実が発生しているもの」を指すと指摘。さらに資産については「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる債権などのように、同族会社が具体的な経済価値を把握しているとはいい難いものを含まないと解される」と示唆した。

その上で、X社の未収入金や仮払金等の債権をひとつひとつ分析し、そのほとんどが0円と認定。
原処分庁主張の直前の貸借対照表価格については「あくまで参考程度にとどめるべきと解される」とし、各勘定科目の中にその回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる債権などのように、額面どおりの経済的価値があるとはいい難い資産や、その債務の発生が確実といえないような負債が含まれている場合には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて客観的な時価を算出するのが相当と判断。
原処分庁算定の限度額は、請求人の発行する株式の適正な時価を反映して算出された適法なものとはいえないとし、原処分庁の処分をすべて取り消した。