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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成29年10月18日裁決)

2018年07月24日
差押処分の2日前に動産は移転していたと認定、処分を全部取消し
平成29年10月18日裁決
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国税を滞納したとして動産を差し押さえたものの、既に動産は滞納者の所有物ではなかったとして、動産の所有者が差押処分の取消しを求めて審査請求した。ポイントは、滞納者から所有者への動産の移転が早かったか、差押処分が早かったか。審判所は、民法の規定に照らし、差押処分時には既に所有者に移転していたと認定した。
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A社は、ある教育事業を行う法人。4つの教室を運営していたが、経営は逼迫し、国税も滞納がちとなっていた。倒産間近となったA社は、同教育活動に関する研究調査開発を行うXに事業を譲渡することとした。
まず、平成28年4月22日、A社とXは、A社の破産申立て・事業廃止により生ずる生徒らに対する悪影響を最小限とするべく、事業の譲渡を行うとともに、4教室の賃借人としての地位と教室にある什器・備品の一切を譲り渡す「譲渡合意」を締結した。
つづいて4月26日、賃借人たる地位と建物の占有を移転する「承継合意」を締結。同日にA社は自己破産の申立手続きを行った。
その2日後の4月28日、原処分庁の徴収担当職員は4教室を捜索。教育事業に使用する機材F8台を差し押さえた。Xは、機材Fは既に上記譲渡合意・承継合意によって自分の所有物になっているため、A社の滞納国税を徴収するための差押処分は無効だとして、処分の取消しを求めて審査請求に及んだ。

原処分庁は、A社とXの合意書には「建物の占有を移転する」旨の記述はあるが、機材Fの占有移転については記載されておらず、また、差押処分時に機材FにXの所有物であることが明示されていなかったため、Xの占有とはなっていなかったと主張した。

審判所は、動産に関する物件の譲渡は引渡しがなければ第三者に対抗することはできないが、民法183条が規定する「占有改定」があったか、つまり占有代理人(本件の場合はA社)がその専有物(機材F)をある時以降本人(X)のために占有する意思を表示したかどうかがポイントになると指摘。
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(占有改定)
第183条 代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
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この「意思表示」があったかどうかについて検討したところ、審判所は以下のように認定した。
(1) XとA社は、A社の破産が生徒らへ及ぼす悪影響を最小限にするために譲渡・承継の合意をしたのであり、レッスンの実施に不可欠な各教室とそこに存する機材Fを含む動産一切を、滞りなく承継させることを企図していたというべき。
(2) たとえ合意書には機材Fの占有の移転について明示的に記載されておらず、また、差押処分時に機材FにXの所有物である旨が明示されていなくても、教室の占有だけでなく機材Fの占有の移転も合意するとともに、承継合意の日以降、教室と機材FがXへ現実に引き渡されるまでは、A社がXのために占有することに合意したものと認められる。

したがって、Xは差押処分の日(4月28日)に先立つ承継合意の日(4月26日)に、機材Fの占有改定による引渡しを受けたものと認められ、滞納者に帰属しない財産に対して行われた差押処分は違法として取り消された。