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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成29年12月13日裁決)

2018年08月27日
売主の土地台帳記載の金額を取得費と認定
平成29年12月13日裁決
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譲渡収入金額の5%、いわゆる「概算取得費」でいったん土地譲渡所得の申告をした納税者が、取得当時の地価公示価格をもとに推計した金額で計算しなおすべきとして更正の請求を行った。税務当局はこれを一蹴し、概算取得費か地価公示価格推計金額で綱引きが行われたわけだが、国税不服審判所が出した答えは、まったく別のものだった。
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請求人Xの父・甲がA土地をF社から購入したのは、昭和41年11月のことだった。所有権の移転登記は、約10年後の昭和52年2月であったが、登記簿には「昭和41年11月24日売買」と明記されていた。
その後、甲は平成12年5月に他界。A土地はXの母・乙が相続により取得した。さらに5年後、今度は乙が平成17年5月に死去し、A土地はXが相続した。平成25年3月に、XはA土地を売却。この時、売却代金と固定資産税等の精算金を受け取る。翌年、A土地の長期譲渡所得に係る確定申告に際して、甲がA土地を取得した時の売買契約書等が見つからなかったため、Xはやむを得ず上記売却代金の5%を取得費とし、譲渡所得を計算、申告した。なお、この時、固定資産税等の精算金は譲渡収入金額に含めなかった。

平成28年7月、XはA土地の昭和52年当時の地価公示価格をもとにその取得費を2,000万円と推計し、その金額を取得費とすべきとして更正の請求を行ったが、原処分庁は推計金額が実額ではないことから認められないとした上で、確定申告時にXが固定資産税等の精算金を譲渡収入金額に含めていなかったことから、この点は救済することとし、減額更正処分を行った。しかし、Xはこの処分を不服として平成29年3月に審査請求した。

本件の争点は「譲渡所得の金額の計算上、控除すべき取得費の金額はいくらとなるか」の1点。
Xは、A土地の売買契約書等の書類は見当たらないが、そのことを理由として、概算取得費により算定すべきではないと主張。A土地に係る取得費の金額は、周辺の土地価格に関する情報を使って合理的に算定すべきであるから、地価公示価格をもとに推計した2,000万円とすべきであるとした。
これに対して原処分庁は、A土地の取得に要した金額の実額は不明であるから、その取得費の金額は概算取得費とすべきであると反論。また、Xの主張金額は、あくまでXが推計した昭和52年時点(A土地の移転登記時)における取得費であって、実際の取得費ではないことから、取得費と認めることはできないとした。

審判所は、甲がA土地を購入した相手先・F社が作成した「土地台帳」の存在に注目。この土地台帳には、昭和41年11月10日に甲から手付金の支払があった旨、同月24日に内金の支払があった旨が記載されており、さらに、ローン契約年数・支払回数の記載は、本件登記簿謄本上、所有権の移転原因が「昭和41年11月24日売買」でありながら所有権移転登記の受付がその10年経過後の「昭和52年2月15日」である事実とおおむね整合している、と指摘。
加えて、この土地台帳は、宅地建物取引業法により帳簿の備付け義務があるF社が、通常業務の過程で作成したものであり、書面の性質上、取引内容が正確に記載されている蓋然性が高いことから、土地台帳の記載内容の信用性は極めて高いとした。
よって、この土地台帳から、甲が(1)昭和41年11月10日に手付金、(2)同月24日に内金、及び(3)同年12月9日に残金として支払った事実を認めるのが相当と判断。(1)~(3)の合計金額をもとに計算した金額がA土地の取得費と認定。これにより計算した譲渡所得の金額は更正処分の金額を下回るから、更正処分はその一部を取り消すべきと判断した。