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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成30年1月30日裁決)

2018年10月02日
相続税の申告漏れで重加算税の賦課決定処分を取消し
平成30年1月30日裁決
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相続税の申告書作成に当たり、税理士に提出した財産一覧表から生命保険金の一部が漏れていたケース。この記載漏れは故意によるものであり、隠ぺい・仮装に該当するとして重加算税の賦課決定処分が行われた。納税者が故意によるものではないと反論したところ、審判所はその主張を認め、重加算税の賦課決定処分を取り消す裁決を下した。
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請求人Xの父・甲は、平成26年5月に死亡。Xは同年6月以降、甲名義の預貯金について相続による承継手続を行うとともに、生命保険契約に係る保険金の支払請求手続きや、互助年金請求契約に係る遺族一時金の請求手続きを行い、これらの金員を受領した。なお、支払を受けた生命保険金は全部で5つだった。
Xは相続税の申告書作成手続をA税理士に依頼。その際、預貯金の残高明細書や生命保険金に係る支払明細書とともに、自ら作成した相続財産の一覧表をA税理士に手渡した。この一覧表には、生命保険金5つのうち2つの保険金と遺族一時金が記載漏れとなっていた。
A税理士は、相続財産の一覧表をもとに申告書を作成し、平成27年4月に提出。すでに申告期限を1か月ほど過ぎてしまっていたため、税務署は無申告加算税の賦課決定処分を行った。
平成28年10月、所轄税務署の庁舎内で、Xに対する税務調査が行われた。調査官は、A税理士に渡した一覧表やXが控えとして持っていた一覧表には、2つの生命保険金と遺族一時金が記載されていなかった事実を指摘、その理由を尋ねた。Xは「一覧表の作成過程で上書き入力を繰り返し行っていたため、いつの時点で消えたかは覚えていないが、税理士に渡した時には消えてしまっていた」と回答。
調査官は、申告から漏れた2つの生命保険金と遺族一時金は計約1,300万円であり、申告をした生命保険金計約1,000万円を上回っていたため、故意に相続財産を隠ぺいしたとみなして、平成28年12月に重加算税の賦課決定処分を行った。

この処分を不服として審査請求を行ったXは、生命保険金等の一部が一覧表から漏れてしまった原因について、「相続財産の明細が判明する都度、その財産の情報をパソコンに入力して一覧表として整理していたが、データの管理ミス又は情報を更新する際の誤った作業により入力した情報を削除してしまい、その結果、一覧表から2つの生命保険金と遺族一時金の記載が漏れてしまった」と説明。故意にこれらを記載しないで一覧表を作成したのではないので、国税通則法68条2項に規定する仮装・隠ぺいには当たらないと主張した。

審判所は、記載が漏れた2つの生命保険金は、申告をした生命保険金と同じXの銀行口座に振り込まれていたことから、「原処分庁においてその存在を容易に把握し得るものといえる」と指摘。
また、X自身の控えには遺族一時金は記載されており、ちゅうちょなくこれを調査官に提示していること、遺族一時金の支払に関する書類についても提示するなど、税務調査に協力的な姿勢を示していたことが認められるとした。
さらにXは、税理士提出用一覧表に遺族一時金の記載がない理由について、上書き入力を繰り返し行ったため消えてしまった旨の説明をしているが、この説明は調査時のXの態度等に照らして不自然ではなく、一応合理的であると認めた。
これらの各事実に照らせば、Xが相続財産を正確に把握していたにもかかわらず、あえて各保険金及び遺族一時金を記載せずに税理士提出用一覧表を作成したとの事実を推認することはできず、ほかにこの事実を認めるに足りる証拠はない。したがって、Xが税理士提出用一覧表を作成した行為は、各保険金及び遺族一時金の存在を隠匿したとか、故意にわい曲したものと評価することはできず、国税通則法68条2項に規定する隠ぺい又は仮装の行為に当たらないといわざるを得ないと判断。重加算税の賦課決定処分を取り消した。