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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成30年2月23日裁決)

2018年11月27日
基準期間ない場合も「特定期間」の適用はあり
平成30年2月23日裁決
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事業年度開始後6か月間の課税売上高が1,000万円を超える場合、資本金1,000万円未満の新設法人でも免税とはならない。創設から5年が経過するこの「特定期間」の制度について、「基準期間が存在しない場合は特定期間もない」と噛みついた納税者が現れた。国税不服審判所はもちろん一蹴したが、納税者はどのような主張を展開したのだろうか。
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X社は、貴金属製品の加工・販売を目的として、平成25年4月に設立された。資本金は500万円で、事業年度は4月1日~3月31日だ。
第2期目である平成27年3月期において、X社は消費税の申告書を提出しなかった。原処分庁は税務調査の結果、「X社設立日である平成25年4月~平成25年9月30日の課税売上高及び給与等の金額のいずれも1,000万円を超えているため、消費税法9条の2第1項の規定により、平成27年3月期は納税義務の免除が適用されない」として、平成29年1月に決定処分を行った。
X社はこれを不服として、すぐさま審査請求をした。

「特定期間」(消費税法9条の2)は、平成23年度税制改正で創設され、平成25年1月1日以後に開始する個人事業者のその年又は法人のその事業年度から適用されている。
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(前年又は前事業年度等における課税売上高による納税義務の免除の特例)
第9条の2 個人事業者のその年又は法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合において、当該個人事業者又は法人のうち、当該個人事業者のその年又は法人のその事業年度に係る特定期間における課税売上高が1,000万円を超えるときは、当該個人事業者のその年又は法人のその事業年度における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、同条第1項本文の規定は、適用しない。(以下略)
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審査請求でX社は、消費税法9条の2第1項の「法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合において」という条文を取り上げ、「基準期間における」と限定しているということは、X社のように「基準期間がない」場合は同項の適用はないと主張した。
また、同条4項において「特定期間」について定義をしているが、同項が指している「前3項」は課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合の規定であり、基準期間がない請求人においては、そもそも「特定期間」はないと解されるとした。

これに対して審判所は、次のような判断を下した。
消費税法は、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については、消費税を納める義務を免除する旨の規定を置いている。しかし、この事業者免税点制度は、小規模零細事業者の事務負担への配慮、多数の納税者に対する税務執行への配慮等から定められたものであり、同法12条の2第1項は、その事業年度の基準期間がない法人のうち、当該事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上である法人について、当該事業年度における課税資産の譲渡等につき、事業者免税点制度の規定を適用しないこととしている。
要するに消費税法は、その事業年度の基準期間がない法人のうち、当該事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上である法人には事業者免税点制度を適用しないと規定しており、消費税法9条1項本文に規定する「事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者」には、当然に「その事業年度の基準期間がない法人」も含まれることになる。そして、消費税法9条の2第1項に規定する「法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合」についても、同法9条1項本文と別意に解する理由はないことから、「その事業年度の基準期間がない」場合が含まれることになる。
よって、X社の主張は採用することができないとして棄却し、原処分庁の処分はすべて適法と判断した。
本件は特定期間制度の適用初年度に当たり、単純に改正を知らなかったために否認を受け、それゆえに審査請求でも稚拙な主張に終始したものと思われる。