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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成30年5月7日裁決)

2019年01月08日
役員による横領金は役員給与に該当?
平成30年5月7日裁決
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代表取締役の実弟である役員が、長年にわたり不正に会社の金を横領していた事実が発覚。役員は会社を逐われたが、問題となったのはその横領金の税務取扱いだ。課税庁は「経理担当責任者である役員による横領は役員給与に該当し、源泉所得税が課される」として納税告知処分を行ってきた。会社はこれに納得せず、国税不服審判所に争いが持ち込まれた。
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請求人・X社は昭和51年に創業、生鮮魚や海産物の販売・加工業を営んでいる。
X社は典型的な同族会社で、取締役は代表者の甲とその実弟・乙の2名のみ。乙は「取締役専務」の肩書を使用しており、平成17年の取締役就任以降、10%~25%のX社株式を保有していた。
平成28年4月、X社に対し原処分庁が事前通知なしの実地調査に入った。その結果、平成21年10月以降、乙がX社の当座預金口座から小切手を振り出すことにより横領していたことが発覚。しかも、出金により現金勘定が多額となってしまったことから、X社の他の預金口座に付け替えるなどの隠ぺい工作まで行っていた。
甲は激怒し、乙を退職処分とした上、横領した金をX社からの貸付金とし、退職金や不動産の共有持分と相殺させ、残額については引き続き返済させることとした。
問題となったのは、横領金の税務上の処理。原処分庁は「横領金は乙に対する役員給与に該当する」として、源泉所得税等の納税告知処分及び重加算税の賦課決定処分を行った。X社はこの処分を不服とし、審査請求に及んだ。

本件の主要な争点は、横領金が役員給与に該当するか否かだ。
原処分庁は、乙が甲の実弟であること、甲に次ぐ役員としてX社の業務において影響力を持っていたことから、経理・財務の責任者として経理業務の重要な部分を任されていたと認められ、その地位に基づいて経済的利益を支給されたと指摘。ゆえにその経済的利益は給与に該当すると主張した。
これに対しX社は、役員が横領した金員が役員給与と認められるのは、その役員が会社を実質的に支配していることから、役員の横領が会社の行為と同視できる場合であるが、乙はX社の少数株主かつ代表権のない取締役にすぎず、その職務内容や権限は経理担当の従業員と変わらなかったと反論した。

これについて審判所は、以下のような判断を下した。
(1) 乙は、X社の株式を10%~25%しか保有しておらず、代表権もない一方で、甲は55%~75%の株式を保有し、代表権を有していたことからすると、乙は単独でX社の業務執行等を決定する地位にはなかったと認められる。
(2) 乙は甲の実弟であるとはいえ、X社の業務執行等を決定していたことを認めるに足りる証拠はない。
(3) 乙は経理業務の一部を行っていたという程度のことはいえるにしても、経理・財務の重要業務を行っていたとまではいえず、責任者であったとはいえない。
(4) 甲が当座預金の残高照会について自らは確認作業を行っていなかったことや、帳簿の不審点について乙を強く追及することがなかったことは、X社の乙に対する管理監督が不十分であったことを示すものとはいえても、乙に経理業務の重要な部分を任せていたことを示すものとまではいえない。
以上の理由から、乙はX社の業務において影響力を有していたとは認められず、経理業務の重要な部分を任せられていたとも認められないから、乙がX社の経営の実権を掌握し、実質的に支配していたとは認められないと判断。横領した金員は役員給与に該当するとはいえないとして、課税処分の全部を取り消した。