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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成30年5月31日裁決)

2019年01月23日
租税軽減策としての債権放棄も「隠ぺい・仮装」には当たらず
平成30年5月31日裁決
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他社から債務免除を受け、巨額の債務免除益が発生してしまった会社が、課税を軽減するためにグループ会社の債務を引き受けた上で、債権放棄した。税務当局は、この行為が税の軽減を目的とした「仮装・隠ぺい」に該当するとして、重加算税を賦課。納税者はこれに納得せず、審査請求に持ち込んだ。国税不服審判所は、「隠ぺい・仮装」には該当せずと判断、原処分庁の処分を取り消した。
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パチンコ店を営むX社は、経営者の甲とその長男が100%の株式を持つ同族会社。甲はX社の他に、コンサルタント業やレストランの経営を営むA社の株式も100%保有していた。つまりX社とA社は兄弟会社ということになるが、両社はL信金を取引金融機関とし、X社はA社の債務を保証しているなど、深く結びついていた。
X社は平成23年2月期、K社から借入金約19億円の債務免除を受け、債務免除益を計上。
これによる租税負担の軽減と資金繰りの悪化に対応するため、A社のL信金からの債務を引き受けた上で、これを債権放棄することにより貸倒損失を発生させることを計画した。
平成22年10月、X社はL信金から2億4,000万円を借り入れて、A社に同額を貸し付け、A社はL信金に返済した。つまり、実質的な債務の引受けを行ったわけだ。
次にA社は平成23年2月、債務超過であることを理由に特別清算の開始を申し立てた。同年4月、X社はA社と「和解」し、2億4,000万円を含む計5億8,000万円の債権を放棄、平成24年2月期において同額を貸倒損失に計上した。
その後の税務調査でX社は、5億8,000万円中、A社に対する債権放棄は寄附金に該当するとして修正申告の勧奨を受け、平成29年4月に修正申告をしたところ、上記の一連の取引は「隠ぺい・仮装」に当たるとして、重加算税の賦課決定処分を受けた。X社はこの処分を不服とし、審査請求に及んだ。

審査請求で原処分庁は、X社は債務免除益に対する課税を避けるべく、A社の整理を計画したことからすると、当初から所得を過少に申告することを意図していたと認められると主張。一連の行為は隠ぺい・仮装の要件である「外部からもうかがい得る特段の行動」に当たると強調した。
これに対して審判所は、隠ぺい・仮装に該当するためには、「A社に対する債権放棄は寄附金に該当する」とX社が認識していたことが大前提になると指摘。この点について、以下のように判断した。
(1) 法人税基本通達9-4-1によれば、兄弟会社による債務引受け等であっても、そのことに相当な理由があれば寄附金の額に該当しないとされているが、この「相当の理由」については、(イ)兄弟会社の経営成績の悪化など、放置した場合には今後より大きな損失を被るか否か、(ロ)債務引受け等を行った支援者がこれを行うことに相当な理由があるか否か――などを総合的に検討して判断すべきと解されるから、支援者が、多額の収益に対する課税を回避するために当該債務引受け等を行ったことのみをもって、直ちに、当該債務引受け等により供与する経済的利益の額が、寄附金の額となるものではないというべきである。したがって、X社が債務免除益に係る課税を避けるためにA社整理を検討したことをもって、貸倒損失額について寄附金の額に該当することを認識していたとはいい難い。
(2) A社が整理前の数年間にわたり純損失を計上することもあり、実質的に債務超過状態にあったことが認められていたこと、また、X社がA社の債務について自社の土地建物に根抵当権を設定していたことからすると、債務の支払が滞った場合には、X社自身が悪影響を受ける可能性も否定できない。これらの事情を総合すると、X社は、債務引受け及び債権放棄を行うことには、法人税基本通達9-4-1の定める相当な理由があるなどとして、債権放棄の額について寄附金の額に該当しないと認識していた可能性があるというべきである。
したがって、X社は貸倒損失額について寄附金の額に該当することを認識していたとは認められず、事実を隠ぺい・仮装したところに基づくものとは認められないとして、課税処分を取り消すべきと判断した。
ただし、修正申告により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が、修正申告前の税額の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があるとは認められないから、重加算税ではなく過少申告加算税を賦課すべきとした。