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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成30年4月25日裁決)

2019年02月13日
信託受益権の取得に伴う手数料の消費税取扱いが争われた事例
平成30年4月25日裁決
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土地と建物を信託財産とする信託受益権を取得した納税者が、消費税の個別対応方式の計算上、取得に伴う手数料の全額を「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」として申告したところ、課税庁は「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに該当する」として否認してきた。国税不服審判所の結論も課税庁と同様となったが、そのような判断となった原因は何だったのか?
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X社は、平成27年3月から12月にかけて、土地と建物を信託財産とする計5つの信託受益権を取得した。これらの土地・建物はすべて商業施設として賃貸の用に供されている。
なお、X社は信託受益権の取得に際し、売買契約を締結するとともに、その信託受益権を投資法人等に譲り渡すことを前提とした、当該投資法人等の「購入意向表明書」を受領していた。
また、X社はこれらの取引を仲介した会社に対し、手数料を支払った。消費税の計算上、X社は個別対応方式を採用していたのだが、上記信託受益権の取引のあった課税期間においてX社は、支払った手数料に係る課税仕入れについて、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」に該当するとして、その全額を控除して消費税額を計算、確定申告した。
ところが原処分庁は、これら一連の信託受益権の取引について、「商業施設の貸付け(=課税資産の譲渡等)のみではなく、信託受益権の譲渡(=課税資産の譲渡等以外)も目的としていたのだから、支払手数料に係る個別対応方式の計算上は『課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ』に当たる」として更正処分等を行った。X社はこれを不服として、審査請求に及んだ。

審査請求においてX社は、投資法人の「購入意向表明書」を受領していたのは将来の譲渡を約したものではなく、不動産ファンドの商慣行として行ったものにすぎないと弁明。本件各信託受益権の取得時において、信託受益権の譲渡を行う目的を有していたとする事実はなく、手数料についても、信託受益権の譲渡を行う目的をもって行われたものには該当しないと主張した。

審判所は、X社が各信託受益権の取得に際して作成していた社内の決裁文書に注目。決裁文書には、投資案件としての各信託受益権の「EXITシナリオ」として、各投資法人等への譲渡が最終目的とされていたことが記載されていると指摘。
つまり、X社は、本件各信託受益権の取得時から各物件の賃貸による収益を享受しつつも譲渡に伴う譲渡収入を得ることを目的として本件各信託受益権を取得したものと認められ、本件各信託受益権の譲渡は、信託財産である土地・建物の譲渡として、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に該当し、また、本件各信託受益権に係る各物件の賃貸は、事業用資産の貸付けとして課税資産の譲渡等に該当することから、取得に要した手数料に係る課税仕入れは、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れに該当するものとして区分するのが相当であると判断、X社の請求を棄却した。