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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成30年5月14日裁決)

2019年03月06日
妻子への給与や賃貸料等の支払は誰に帰属するか
平成30年5月14日裁決
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医療法人の理事長が妻子に給与や委託料を支払うとともに、物件の賃貸料や個人年金を受領させていた事案で、税務署は「すべて理事長本人の所得であり、申告漏れ」と指摘した。理事長は「所得は妻子それぞれに帰属する」と主張したが、国税不服審判所の判断は、支払の内容により理事長に帰属するものと妻に帰属するものに峻別。これらの分岐点となったポイントを探る。
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Xは、医療法人J会の理事長を務める医師。妻と長男はJ会の理事に就任しており、妻には月額約75万円の役員給与を、長男には月額25万円の給与手当をそれぞれの名義の預金口座に入金していた。また、次男には月額10万円の委託料を支払っていた。なお、長男・次男とも医師であり、長男は国内の他の病院に、次男は米国の病院に勤務している。
また、Xは平成元年、銀行から妻名義で約5,000万円を借り入れ、建物を建設。妻はその建物を賃貸することで、月額22万円の賃貸料が妻名義の預金口座に支払われていた。
さらに、平成3年、Xは妻を個人年金生命保険に加入させ、平成24年以降、毎年約850万円の年金が妻名義の口座に支払われた。
これらの一連の取引や預金口座の管理は、すべてXが主体となって行っており、妻や長男、次男は一切関わっていなかった。
平成26年8月、Xと妻は離婚訴訟を提起。平成28年2月に和解が成立し、上記の妻、長男、次男名義の預金はもとより、妻名義の建物も年金保険契約も、すべてXに権利があることが確認され、「真正な登記名義の回復」を原因とするXへの所有権移転登記が行われた。
平成29年3月、原処分庁は上記資産がすべてXに帰属するとして、平成21年分~平成27年分までの所得税等の更正処分及び加算税の賦課決定処分を行ったが、Xはこれを不服として審査請求に及んだ。

主要な争点は、(1)元妻、長男、次男に支払われた給与等、(2)元妻に支払われた建物の賃貸料、(3)元妻に支払われた年金が、それぞれXに帰属するか否か。
原処分庁は、(a)Xが各預金口座の存在自体を妻子に伝えずに通帳等の管理を行っていたこと、(b)離婚訴訟の和解により、各資産に係る権利を、当初からXが有するものとされたことなどからすると、Xに帰属していたと認められるとした。
これに対してXは、まず、上記(1)については、元妻と長男はJ会の理事であったこと、次男は米国から帰国した際に米国の整形外科に関する知識などを提供していたことから、給与等はそれぞれに帰属するものであるし、上記(2)、(3)についても、元妻は建物の取得資金の融資を受ける際、金融機関から本人確認を受けており、年金保険契約の締結時にも保険会社から本人確認を受けていることから、元妻に帰属すると反論した。

審判所は、まず上記(1)について、元妻はJ会においてボランティア程度の役務しか提供しておらず、長男は全く労務・役務提供していないこと、また次男も医療情報等の提供は全く行っていないことなどから、3人に対する支払は給与・報酬等とは認められず、Xに帰属するものと認めた。
次に上記(2)については、賃貸借契約の締結直後から名義人は元妻となっており、所有権の保存登記も行われていること、取得資金も元妻が借り入れたものであることを指摘した上で、Xが当時、建物を元妻に取得させる意思を有していた可能性も否定できず、Xが当初から建物を所有していたとは認められないと判断。賃貸料は元妻に帰属するとした。
同様に上記(3)についても、Xが元妻のために積極的に保険契約を締結し、保険料を負担していた可能性も否定できないとして、年金がXに帰属するとは認められないと判断。上記(2)、(3)に係る部分の課税処分は取り消すべきとした。