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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成30年8月22日裁決)

2019年04月17日
相続人名義財産の返還請求権は相続財産に該当せず
平成30年8月22日裁決

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父親が生前、妻や子供の名義で預金口座の開設や株式の購入をしていた。いわゆる典型的な名義財産だが、原処分庁はこれについて、被相続人の相続人に対する「名義財産相当額の預け金返還請求権」と認定。相続財産に該当するとして更正処分等を行った。国税不服審判所は、これらの財産は過去に被相続人から相続人に贈与がされたものと認め、これらに相当する預け金返還請求権は存在すらしていないとして、課税処分を取り消した。
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平成26年12月に死亡した被相続人甲の相続人は、妻の乙と長女A、長男Xの3人。Aは他家へ嫁ぎ、Xは平成18年から甲宅の隣地に自宅を建築し、家族とともに居住している。
甲は昭和50年代から、家族名義での預金口座の開設や上場株式の購入などを繰り返し行っており、「総括表」や「ファミリー総資産」などと題する書面に記録をし、管理してきた。
甲は昭和62年に、X名義の預金口座を開設。各証券会社からの入金や解約貯金、株式の売却代金等をこの口座に入金し、口座内の現金は総額約5,000万円となった。このほか、甲はX名義でS社株式約500万円分を購入した。
その後もX名義預金は、実質的に甲が管理運用していたものの、X自身の給与が振り込まれたり、X宅の建築資金が使われるなど、半ば混然一体とした状態となっていた。
平成26年に甲が死亡し、Xらは相続税の申告を行ったが、相続財産の中に上記X名義の預金等の資金約5,500万円が含まれていなかったため、原処分庁は「本件資金に相当する金額の預け金返還請求権約5,500万円は相続財産に該当する」として、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。

審査請求でXは、「本件資金の原資はXが幼少の頃から贈与を受けてきたものであり、就職後はX自身が管理運用してきたものなので、本件資金はXに帰属し、本件資金相当額の預け金返還請求権は存在しない」と主張。課税処分の取消しを求めた。

審判所は、(1)本件資金及び本件資金の原資の管理運用は甲が行っていたものであり、そうであれば、本件資金を預金口座に入金したり、その後、X名義の上場株式の購入資金に充てたりしたことは、財産の管理運用の一環として、Xの名義で甲が実質的に行っていたものと認められること、(2)平成18年頃に本件資金の運用から生じた化体財産は甲からXに贈与されていたことからすれば、そもそも本件資金相当額の預け金返還請求権の存在はおろか発生していたとすらいえないと指摘。
したがって、甲は相続開始日において、Xに対し、本件資金相当額の預け金返還請求権を有しているとは認められないと判断。原処分の全部又は一部を取り消した。