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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成30年9月27日裁決)

2019年06月19日
誤解に基づきなされた可能性がある申告は重加算税の対象か
平成30年9月27日裁決
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3棟の家屋の敷地の用に供されていた土地のすべてに居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例を適用してなされた確定申告について、所得を過少申告することを意図し虚偽答弁等をしたとして重加算税の賦課決定処分等をした原処分に対し、国税不服審判所は、「請求人は適用対象家屋を誤解して申告をした可能性があり、所得を過少申告することを意図していたと認めることはできない」として、課税処分の一部を取り消した。
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請求人X1及びX2は、平成27年6月、3棟の家屋(母屋、別棟A、別棟B)の敷地の用に供されていたX1らの共有の土地を更地にして譲渡したことによる譲渡所得について、租税特別措置法35条1項の規定による居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例を適用して、平成27年分所得税等の確定申告をした。
※本件各建物の配置は以下の通り。
http://www.kfs.go.jp/service/JP/112/02/bessi05.html

原処分庁は、別棟A及び別棟Bについては、X1らが居住の用に供しておらず、その敷地部分について当該特例を適用できないと指摘。また、X1が所得を過少に申告することを意図し、虚偽答弁をしたなどとして、所得税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分等を行った。
X1らは、別棟A及び別棟Bは物置として利用しており、3棟の家屋すべてがX1らの居住の用に供していた家屋に該当するから、母屋と一体とみなされる居住用財産と判断されるべきであり、敷地のすべてに本特例を適用できると主張し、また、X1が虚偽答弁をする意図や、虚偽答弁をした事実はなく、別棟の敷地に当該特例の適用が認められないとしても、あくまでも見解の相違にすぎないとして、原処分の取消しを求めた。

争点は、(1)当該特例を適用できる範囲は建物3棟すべてか一部か、(2)請求人X1らの行為が虚偽答弁に当たり、重加算税の賦課要件を満たすか否か、の2点。

(1)について、審判所は、本件において特例の適用対象となる家屋の判定に当たり、2以上の家屋が併せて「一構えの家屋」であるといえるかについては、まず、それぞれの家屋の規模・構造・間取り・設備・各家屋間の距離等の客観的状況によって判断すべきであり、個人及び家族の使用状況等の主観的事情は二次的に参酌すべき要素にすぎないため、単にこれらの家屋がその者及び家族等によって、機能的に一体として居住の用に供されているのみでは不十分であり、客観的状況から判断していずれか又はそれぞれが独立の居住用家屋として機能できないものでなければならないとし、本件の3棟の家屋を併せて一構えの家屋とは認めず、X1らが主として居住の用に供していると認められる母屋に限り、特例の適用対象となると判断した。

また、(2)については、国税通則法68条1項及び2項に規定する重加算税の制度は、納税者が過少申告をするについて「隠蔽又は仮装」という不正手段を用いた場合等において、過少申告加算税等よりも重い行政上の制裁を科することによって、悪質な納税義務違反の発生を防止する趣旨のものであり、重加算税を課するためには、過少申告行為等とは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在することを要するが、本件において、X1らの行為に、いわゆる積極的な隠蔽又は仮装の行為がない点については争いがない。
また、X1は「別棟A及び別棟Bを物置として利用していれば、各建物が一体として自己の居住の用に供する家屋に該当する」と誤解し、本件土地の全体に特例を適用して申告をした可能性があるといわざるを得ず、X1が、当初から所得を過少に申告することを意図していたとまでは認められないと判断。国税通則法68条1項に規定する重加算税の賦課要件を満たさないと判断し、原処分の一部を取り消した。