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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成30年10月10日裁決)

2019年07月17日
共同開発契約に基づく負担金は試験研究費か繰延資産か
平成30年10月10日裁決
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医薬品の共同開発契約に基づき支払った負担金を、試験研究費として損金の額に算入したところ、負担金は役務の提供を受けるために支出する費用であり、その「支出の効果」が1年以上に及ぶことから、繰延資産に該当すると判断された。納税者はこれを不服として
審査請求に及んだものの、審判所の判断も原処分を支持するものとなった。
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医薬品等の製造売買等を行うX社は、A医薬品について、複数の民間企業と共同開発及び製造販売に関する契約を取り交わしており、その一環として、Aの開発を先行して行っていたP社と契約を締結した。X社とP社は、契約締結後、医薬品医療機器等法が規定する
厚生労働大臣の承認を取得するため、それぞれで申請を行い、承認を得た。
X社は、平成26年3月期から平成28年3月期までの各事業年度の法人税について、Aに関する共同開発契約書等に基づき支払った負担金を、租税特別措置法42条の4第1項(試験研究費の総額等に係る法人税額の特別控除額)又は同条4項(試験研究費の増加額等に係る法人税額の特別控除額)が規定する試験研究費として、法人税の計算上損金の額に算入して青色申告書に記載し、期限内に提出した。
これに対し原処分庁は、Aの承認取得のためX社がP社と契約を締結し共同開発の費用負担を行う者として取引をしていること等を理由に、X社とP社が共同開発をしているとは認めず、基礎研究費に計上した金額は、P社が開発してきた成果の開示と利用、及び将来発生すると見込まれる業務等に支出したものと認められるため、繰延資産に該当するとして、償却限度額を超える金額の損金算入を否認。X社に対し、更正処分・過少申告加算税の各賦課決定処分を行った。

X社は、Aの共同開発契約に基づきP社に支払った負担金について、当局の承認を得るためにP社から開示された資料等は共同開発の成果であって、X社が自己開発したものと同様であること、また、負担金の支出には本承認が得られないリスクがあり、必ずしもその「支出の効果」がその後に及ぶものといえないことなどから、負担金は繰延資産に該当しないと主張した。

これについて審判所は、負担金の対象となる各業務はP社が担当する業務であり、ほとんどが契約締結日までに完了していたことに加え、X社は本承認の申請に必要なデータをP社から取得し、契約締結日から短期間で本承認の申請をしていたことなどから、X社が当該共同開発の主体であったとみることはできず、負担金はP社が開発の過程で得た成果の提供という役務の提供を受けるために支出した費用であると指摘。すなわち、法人税法施行令14条1項6号ハ(繰延資産の範囲)に掲げる「役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用」に該当すると認められると判断した。
さらに、法人税法2条24号に規定する繰延資産の定義「支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶもの」については、X社が契約に基づいて、P社が開発の過程で得た成果等の提供を受けること自体は、直ちにX社の収益を生み出すものではないが、成果の提供を受けて完成された成果物である「本承認申請書等」は、本承認を取得することにより対象製剤が製造販売されて収益を生み出すことができる性質を有するものであることに鑑みれば、本承認申請書等により本承認を取得したことをもって「支出の効果」と解すべきと強調。医薬品医療機器等法の規定によれば、本承認を取得した効果は少なくとも5年は継続するということができることから、本件各負担金の支出の効果が支出の日以後1年以上に及ぶことは明らかであるとした。
よって負担金は繰延資産と認められるとして、原処分庁の処分は一部を除き適法であると結論付けた。