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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成31年3月14日裁決)

2019年10月02日
収益の計上時期をめぐり課税処分全部取消しの裁決
平成31年3月14日裁決
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土地の開発権の譲渡契約が履行され、収益が生じた時期はいつかが争われた。課税庁は譲受法人が市から開発許可の承継承認通知書を受けた時と、納税者は清算合意書が締結された時と主張。国税不服審判所は、納税者側の主張を全面的に認め、原処分庁の処分を全部取り消す判断を下した。
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不動産業を営む青色申告法人であるX社(10月決算法人)は、平成27年8月21日、所有する土地に係る開発権をK社に譲渡することとし、要旨下記の開発権譲渡契約書を締結した。
(a) 本件契約における開発権とは、都市計画法等に基づく許認可、開発事業のために発注した設計業務等の関連契約上の権利義務及び地位、地価・環境・レポート、作成された図面その他の図書並びにこれに係る権利利益の総称を意味する。
(b) X社は、本件開発権をK社に移転し又はK社がこれを取得するために必要な手続を開始し、可及的速やかに完了するよう最大限努力し、開始後逐次手続進捗状況をK社に対して書面で報告する。なお、本件開発関連契約の移転については、K社の満足する内容の引継契約が締結されること、本件レポート及び本件開発関連図書については、X社が表明する保証内容が正しいことを確認するため第三者の承諾書を得ることを要する。
(c) X社は、(b)の手続の完了のみを停止条件として、本件開発権の全てをK社に対して有効かつ何らの瑕疵、違反、取消事由、無効事由、解除事由、負担のない状態で移転し、又は取得させなければならない。

K社は、本件開発事業に係る開発許可に基づく地位をX社から平成27年8月21日に承継したとして、開発許可に基づく地位の承継承認申請書をJ市長に提出し、その後、同年10月末日までの間に、K社はJ市長から開発許可に基づく地位の承継承認通知書を受領した。
X社は、平成27年10月28日に、平成27年11月1日から平成28年10月31日までの課税期間を適用開始課税期間とする「消費税課税事業者選択不適用届出書」を原処分庁へ提出した。
K社は、平成27年11月2日、譲渡代金のうち6,600万円をX社に支払った。
その後、X社とK社は、開発関連契約の移転手続が進まず手続完了のめどが立たなかったため、協議を重ねた結果、移転手続の完了を待たずに清算することとし、開発権の譲渡対価の残金を支払うことで合意。平成28年7月6日、清算合意書を作成し、7月13日に残金が支払われた。

X社は開発権の譲渡は清算合意書が締結された平成28年10月期(課税期間)であるとして法人税・消費税の申告を行ったが、原処分庁は、譲渡代金の収益計上の時期は、K社が開発許可に基づく地位の承継承認通知書の交付を受けた時であり、X社が課税時期を繰り延べたことに隠ぺい・仮装があるとして、平成29年12月26日、平成27年10月期以後の法人税の青色申告の承認の取消処分をするとともに、法人税・消費税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行った。
X社はこれを不服として審査請求に及んだ。

審判所は、「開発権の譲渡代金の収益計上の時期はいつか」について、「本件譲渡代金の収益は、その収入すべき権利が確定したときの属する年度の益金に計上すべきものと解されるところ、その権利が確定する時期は、請求人が本件開発権について契約に定められた物又は権利の全てを引き渡し、移転又は取得させた時と認められる」と指摘した上で、以下のとおり判断し、原処分庁の処分を全部取り消した。
(1) 本件契約書の上記(a)において、開発権には許認可だけではなく、開発関連契約上の権利義務及び地位、レポート及び開発関連図書並びにこれに係る権利利益についても含まれている旨定められ、上記(b)において、請求人の手続面における義務が定められ、上記(c)において、(b)の手続の完了のみを停止条件として開発権の全てをK社に対して移転し又は取得させなければならないと定められていることから、(b)の手続が完了するまでは、権利の移転の効力の発生が停止しているとみるのが相当である。
(2) X社及びK社は、本件取引条件が実際には成就していないことを確認した上で、清算合意書の締結をもって本件取引条件が成就したものとみなすことに合意し、譲渡代金の残額を請求人に支払うこととした。そうすると、清算合意書の締結により、(b)に定める手続が完了し、(c)に定める停止条件が成就したものとみるのが相当である。
(3) したがって、清算合意書が締結された平成28年7月6日に、本件譲渡代金の収入すべき権利が確定したと認められるから、譲渡代金の収益計上の時期は、平成28年10月期である。

さらに、平成28年10月課税期間にはX社が免税事業者となっているため、開発権の譲渡が課税資産の譲渡に当たるか否かの争点については、上記のとおり、譲渡代金の収入すべき権利が確定した時期は平成28年7月6日であると認められ、消費税法上の取扱いについても同様であると認められると指摘。X社は免税事業者であるため、開発権の譲渡が課税資産の譲渡等に該当するか否かを判断するまでもないと断じた。