お問い合わせ

  • 〒101-0032
  • 東京都千代田区岩本町1-2-19
  • 株式会社日本法令 ZJS会員係
  • 会員直通:03(6858)6965
  • FAX番号:03(6858)6968
お電話での受付時間
平日 9:00~12:00
  13:00~17:30

お問い合わせはこちら

SSL グローバルサインのサイトシール

このシステムは、SSL(Secure Socket Layer) 技術を使用しています。ご入力いただいたお客様情報はSSL暗号化通信により保護されております。SSL詳細は上のセキュアシールをクリックして確認することができます。

税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成31年2月20日裁決)

2019年10月09日
現存する建物の解体費用は相続財産から控除できず
平成31年2月20日裁決
---------------------------------------------------------
相続により築45年のビルを取得した相続人は、鑑定評価に基づき、このビルは既に経済的価値はないものとして、解体除去費用を相続財産から控除して申告した。原処分庁は、このビルにはいまだ複数のテナントが入っており、被相続人らも居住していたことから、固定資産税評価に誤りはないとして否認。審判所も原処分庁の処分をおおむね支持した。
---------------------------------------------------------

被相続人甲は平成27年12月に死亡。相続人は甲の子Xら3名であった。
相続財産として、土地及び土地の上に建築された8階建てのビル(昭和45年建築)があった。
ビルの1階及び地下1階は貸店舗として貸し出され(月額賃料合計51万円)、6階部分に甲と妻が居住していた。なお、7階、8階が電気設備等の機械室であったほか、その他の階は相続発生時点で利用されていなかった。
Xらは、相続税の申告において、土地とビルの評価は不動産鑑定士に依頼。ビルの解体除去を前提とし、その価額を考慮せず、土地の更地価格を8,565万6,000円とした上で、ビルの解体除去費用として7,000万円を差し引いた1,565万6,000円を土地とビルの価額として申告した。
原処分庁は、ビルの評価は財産評価基本通達の定めどおり、固定資産税評価額によるべきとして更正処分、過少申告加算税の賦課決定処分を行った。Xらはこの処分を不服として審査請求に及んだ。

Xらは下記のとおり主張、課税処分を取り消すべきとした。
(a) 本件ビルの固定資産税評価額は未償却残高と大きな乖離があり、平成6年度から相続開始日まで据え置かれ、その間の減価が全く反映されておらず、一般常識からかけ離れた評価がされている。
(b) 本件ビルは、2階から4階までが特殊な構造で、再利用が困難な建物であること、本件ビルに使用されているアスベストの除去、有害物質(PCB)を含んだ大型電気機器の撤去及び処理が必要となること、2階より上階は居宅として利用せざるを得ない状況であるため、修繕や小型の電気機器を撤去しながら経済性を考慮しないで使用していることから、本件ビルを解体除去することを前提とする本件鑑定評価書に合理性はある。
(c) 以上のとおり、本件ビルの固定資産税評価額は正しく評価されたものではなく、鑑定評価書に合理性はある。

これに対し審判所は、本件鑑定評価書が合理性を有し、「評価通達に基づいて評価した価額が客観的交換価値を適正に評価したもの」との推認を覆すことになるか否かについて、以下のように判断した。
(1) 本件鑑定評価書においては、本件不動産(土地とビル)の最有効使用の判定に当たって、本件ビルは、大改修を行っても収益性回復は困難であり、機能的、経済的観点から市場性が全く認められないため、解体除去が必要であると判断しているが、本件ビルの地下1階と1階部分は貸店舗として、6階部分は甲とその妻の居宅として利用されていたことからすると、相続開始日において現に利用されていたことは明らかであるから、少なくとも賃貸用及び居住用に供されている部分については、相応の経済価値があったと認められる。
(2) 本件鑑定評価書においては、本件不動産の最有効使用のためには本件家屋の解体除去が必要であると判断しているが、現実の本件ビルの用途等を継続する場合の経済価値と本件ビルを解体除去した場合の解体除去費用等を適切に勘案した経済価値との十分な比較考量がされているとは認め難い。
(3) したがって、本件鑑定評価書における本件不動産の最有効使用の判定は、直ちに合理性を有するものとは認められないから、本件不動産の最有効使用のためには本件家屋の解体除去が必要であると判断した本件鑑定評価書に合理性があるとは認めるに足りない。

以上のように、本件鑑定評価書の合理性は認められず、評価通達の定めに従った評価が本件不動産の「時価」を適切に反映したものではなく、客観的交換価値を上回るものであるとのXらの主張は認められないと判断した。
ただし、本件土地及びビルのそれぞれの審判所認定額が原処分庁主張の価額を下回ったことから、更正処分・過少申告加算税の賦課決定処分を一部取り消すべきとした。