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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和元年5月22日裁決)

2020年01月09日
滋養強壮のための漢方薬購入費用は医療費控除の対象か
令和元年5月22日裁決
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インターネットを通じ購入した処方箋を必要としない漢方薬4種が、医療費控除の対象となる医薬品に該当するかが争われた。審判所は、「これらの漢方薬の成分はいずれも日本薬局方に収載された成分ではあるものの、健康補助食品等として製造販売されたもの」と認定、その購入費用は医療費控除の対象となる医療費には該当しないと判断した。
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請求人Xは、生計を一にする実母の治療・療養のため、4種の漢方薬A、B、C、Dを、インターネットを通じて薬局等から購入した。
【漢方薬A、B】その製造販売において、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」)14条1項に規定される厚生労働大臣の許可を必要としない健康補助食品。
【漢方薬C】薬機法36条の7第1項2号に規定される第2類医薬品。効能は滋養強壮。処方箋がなくても購入可能。
【漢方薬D】薬機法36条の7第1項3号に規定される第3類医薬品。効能は滋養強壮。処方箋がなくても購入可能。
Xは、平成28年分の所得税等の確定申告において、漢方薬A~Dの購入費用を医療費控除の対象として申告したところ、原処分庁は、これら漢方薬は所得税法73条《医療費控除》2項及び所得税法施行令207条《医療費の範囲》2号に規定される「治療又は療養に必要な
医薬品」に該当せず、医療費控除の対象とならないとして、所得税等の更正処分等を行った。
Xはこの処分を不服とし、処分の全部の取消しを求め、審査請求に及んだ。

所得税基本通達では、医療費控除の対象となる医薬品購入費の範囲について、次のように定めている。
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(医薬品の購入の対価)
73-5 令第207条第2号に規定する医薬品とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第1項《医薬品の定義》に規定する医薬品をいうのであるが、同項に規定する医薬品に該当するものであっても、疾病の予防又は健康増進のために
供されるものの購入の対価は、医療費に該当しないことに留意する。
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また、薬機法2条1項は次のように規定している。
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(定義)
第2条 この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具等(…)でないもの(…)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(…)
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Xは、最高裁判例・学説・厚生労働省通達において、薬機法2条1項の医薬品の定義は広く解されており、これらに従えば漢方薬A~Dはいずれも同項の医薬品に該当するため、所得税法及び同施行令に規定される「治療又は療養に必要な医薬品」に該当する等と主張した。
これに対し審判所は、所得税法施行令207条2号における「治療又は療養に必要な医薬品」は、薬機法2条1項に規定する医薬品をいうと指摘。
まず、漢方薬A、Bの成分には、それぞれステアリン酸Ca及びデキストリンが含まれており、これらはいずれも薬機法2条1項1号の「日本薬局方に収められている」成分ではあるが、A、Bの製薬会社は健康補助食品として製造販売しており、その製品情報やホームページの製品ガイドの記載は、食品表示法に規定する食品表示基準に基づいて記載されたものと認められ、その製品を服用する対象者についても、医薬品のような効能効果の記載は認められないため、A、Bの使用目的は食用に限定されていると認定した。
また、漢方薬C、Dについても薬機法2条1項に規定される医薬品に該当するが、疲労回復や健康維持のために用いられるものであり、X母の「治療又は療養に必要な医薬品とはいえない」と認定。
薬機法2条1項に規定する医薬品に該当するものであっても、疾病の予防又は健康増進のために供されるものの購入の対価は医療費に該当しないと判断し、Xの請求を棄却した。