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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和元年6月27日裁決)

2020年02月07日
被相続人口座から相続人口座への資金移動は贈与に当たらず
令和元年6月27日裁決
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医師であった被相続人の代理人として相続人が医療関係者との交渉や接待、会議への出席等、本来被相続人が従事すべき医療業務に従事するための費用の精算・前渡しとして、被相続人の預金口座から相続人の預金口座に資金を移動した行為が贈与に当たるか否かが争われた。審判所は、これらの行為は贈与に該当しないと判断した。
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請求人Xは、平成26年12月に父甲が死亡するまで、甲が営む医院の青色事業専従者であった。
平成23年4月及び平成24年10月、甲は、甲名義の普通預金口座からX名義の普通預金口座へ、それぞれ入金をした。Xは、平成23年4月の入金については贈与税の申告をせず、平成24年10月の入金については贈与税の申告を期限内に行った。
平成30年1月、原処分庁は平成23年分及び平成24年分の贈与税に係る実地調査を実施。その結果に基づき、原処分庁は、平成23年分の贈与税について無申告加算税の賦課決定処分等、また平成24年分の贈与税について過少申告加算税の賦課決定処分等を行った。Xは処分を不服として再調査の請求をしたが、再調査審理庁は棄却の決定をした。
Xは、原処分庁に不服があるとして、審査請求に及んだ。

Xは、平成23年4月及び平成24年10月の各入金の実態は、医療関係者との交渉や接待、会議への出席など、本来甲が従事すべき医療業務に、甲の代理人として従事した際に立て替えて支払った費用の精算、及び今後同様に甲の代理人として従事することにより立て替えて支払うこととなる費用の前渡しに過ぎず、甲がXに対し贈与する意思をもって行われたものではなく、Xが甲から受贈する意思をもって行われたものでもないため、民法549条に規定する贈与とはいえない、と主張した。
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(贈与)
民法549条 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
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これに対し原処分庁は、Xと甲との間で金銭消費貸借契約が締結された事実及びXの主張する立て替えた費用の精算や前渡しの事実は認められず、Xと甲の間には、民法549条に規定する贈与契約の要件事実について黙示の合意があったと認めるのが相当であるとして、Xは上記各入金で、甲からの贈与による財産を取得したといえる、と主張した。

審判所は、以下の諸点をあわせて考慮すると、甲は、交通費等の支弁する目的で入金していたとみるのが自然とした。
(1) Xが、贈与税の基礎控除を超える贈与を甲から受けた際には、贈与税の申告書を法定申告期限までに提出していること
(2) 争点となっている平成23年4月及び平成24年10月の各入金では、甲とその妻により、甲の口座から出金された金銭がXの口座に入金されており、その手続きが金融機関の窓口にて同時に行われていること
(3) Xは、X名義のクレジットカードにより各種支払を行っており、その決済金の支払口座はX名義の口座であること
(4) Xが、甲の指示により月1回~2回程度の頻度で開催される医療専門団体の会議に出席していた旨申述していること
よって、Xが各入金によって実質的に贈与と同様の経済的利益が生じていたと認めることはできず、甲からの贈与により財産を取得したと認めることはできないとして、原処分の全部を取り消した。