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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(平成31年4月19日裁決)

2020年04月01日
支払が争われていた約定違約金は債務控除の対象となるか
平成31年4月19日裁決
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被相続人は生前、建築工事請負契約を解除したことにより、違約金の支払をめぐって建築業者と争っていた。相続発生後、相続人は相続税申告において違約金を債務控除の対象として申告したが、原処分庁は債務と認めなかった。審判所は、違約金は相続税法14条1項に規定する「確実と認められる」債務に当たるとして、原処分庁の主張を斥けた。
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被相続人甲は、生前の平成25年2月、所有する2つの土地上に、2棟のアパートを新築する旨の各工事請負契約を、K社と締結した。各請負契約の特約事項には、発注者・甲が請負契約を解除・解約した場合、(1)請負者・K社は甲に対し各約定違約金(合計5,879,475円)と実費相当額の合計額を請求できる旨、及び(2)K社が請負契約締結時に受領した各契約内金(合計962,850円)を(1)の違約金等に充当する旨、が定められていた。
甲は、同年5月、K社に対して、各請負契約を解除する旨、及び各約定違約金と各実費相当額の合計額(各違約金等)の支払については消費者契約法9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)1号に規定する「平均的な損害」を超えるなどとして、各契約内金の合計962,850円を本件各違約金等の支払に充当することで終了したい旨を、書面で通知した。
その後、平成25年8月に甲は死亡し、相続が開始された。共同相続人であるXらが、甲が所有していた各土地等を取得した。
K社は、相続開始後、Xらを被告として、各違約金等から本件各内金を控除した違約金残金(遅延損害金を含む)5,022,625円について、各法定相続分に応じた金額等の支払を求める訴えを提起した。
これに対しXらは、各請負契約に際してK社側に甲に対する説明義務違反等があり、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求権が生じていたところ、これをXらが相続したとして、K社に対して損害賠償金19,293,529円等の支払を求める反訴を提起した。
地方裁判所は、Xらに対し、違約金残金等の支払を命ずる旨及び反訴請求を棄却する旨の判決を言い渡した。Xらは控訴した。
この裁判と並行してXらは、相続税について、申告書を法定申告期限内に共同で原処分庁に提出した。この際、Xらは、各違約金等を6,015,475円として、債務に計上した。
原処分庁は、各違約金の債務控除は認められないなどとして、各通知処分をした。
Xらは、処分を不服とし、再調査の請求をし、再調査決定後の処分も不服として、審査請求に及んだ。

Xらは、甲は生前に違約金の支払を拒否したことはなく、違約金の減額を求めたにすぎず、これに対しK社は減額を拒否し提訴したことを理由に、違約金残金は確定した債務であるから、債務控除は認められる、と主張した。
これに対し原処分庁は、(1)甲は生前、各内金をもって終わりにしたい旨通知しており、違約金残金を支払う意思はなかったこと、(2)K社は、違約金残金の支払を求め提訴したが、Xらは支払を拒否し現在も係争中であることから、違約金残金は確実と認められる債務ではなく、債務控除は認められない、と主張した。

審判所は、相続税法13条1項は、相続により取得した財産の課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人の債務で相続開始の際現に存するもののうち、当該相続により財産を取得した者の負担に属する部分の金額を控除した金額による旨規定し、同法14条1項は、同法13条1項の規定によりその金額を控除すべき債務は「確実と認められるもの」に限る旨規定しており、「確実と認められる」債務とは、相続開始当時の現況に照らし、その履行が確実と認められるものをいうと解され、原処分庁が主張するように、債務者の履行の意思によってその「確実性」の判断を異にするものとは解されない等として、違約金残金は、相続開始日に現に存し、その履行を免れないものであり、履行が確実な債務であったと認めるのが相当であるとした。
その上で、相続税の課税価格の計算においては、各内金962,850円を甲がK社に対して有していた債権として財産の価額に加算し、各違約金等の全額5,985,475円を債務として控除するのが相当であるとした。