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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和元年9月20日裁決)

2020年04月24日
地主が支払った建物収去費用の必要経費該当性
令和元年9月20日裁決
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賃貸していた土地上に建物を建てた賃借人が死亡したものの、債務超過状態であったため、すべての相続人が相続放棄をした。相続財産管理人は未払の賃料を払わず、建物も収去しなかったため、地主は法的手続き及び収去費用の負担を余儀なくされた。この建物収去費用が、不動産所得の必要経費か家事上の経費かが争われたが、国税不服審判所は必要経費と判断し、課税処分をすべて取り消した。
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請求人Xらは、不動産貸付業を営む個人事業者。Xらは、共有する土地の一部(約684平方メートル)を、Aに対し月額378,500円で賃貸していた。Aは、4軒の建物を所有し、複数の賃借人に賃貸していた。
平成24年10月、Aは死亡し、Aの法定相続人は全員、相続放棄をした。
平成25年8月、請求人の1人であるX1は家庭裁判所に、亡Aの相続財産に係る相続財産管理人の選任審判を申し立てた。同年10月、Xらは、選任された相続財産管理人B(弁護士)に対し、未払賃料4,163,500円(11か月分)を催告するとともに、期限内に支払われない場合は土地賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたが、Bからは支払われなかったため、土地賃貸借契約は終了した。
さらに平成26年9月、請求人の1人であるX2は、Aの相続財産法人に対し、各建物を収去して土地を明け渡すこと、賃料相当損害金を支払うこと、及び退去していなかった賃借人に対しての明渡し等を求めて提訴。その結果、相続財産法人及び賃借人2名と和解が成立し、賃借人は退去したものの、相続財産法人は和解の期限内に建物を収去しなかった。このためX2は、平成27年12月、相続財産法人の費用で収去できる旨の授権決定をした上、和解調書及び授権決定に基づき、各建物収去の代替執行及び土地明渡しの強制執行を申し立てた。
平成28年3月、これらの執行は完了したが、この際Xらは、各建物収去費用を負担した。
Xらは、平成28年分の所得税において、不動産所得の金額の計算上、各建物収去費用をそれぞれの必要経費に算入し、確定申告を行った。ところが原処分庁は、各建物収去費用は必要経費ではなく、家事上の経費に該当するとして、各更正処分及び過少申告加算税の各課決定処分をした。Xらはこの処分を不服とし、審査請求に及んだ。

原処分庁は、本件土地は、土地賃貸借契約が終了した平成25年10月以後、Xらの不動産事業に供されていない資産であり、同様に各建物も取り壊されるまで不動産事業に供されていない資産であるとし、その収去費用の支払いは、相続財産法人が負担すべき費用を立て替えたにすぎないなどとして、所得税法45条1項(家事上の経費)に該当すると主張。
これに対しXらは、土地の貸付業務は更地を貸し付けてから更地を返還されるまでが一連の流れであり、土地賃貸借契約の終了にかかわらず業務は継続しており、また、各建物収去費用は土地の維持・管理のために要した費用であるため、貸付業務の遂行上必要な支出であるなどとして、必要経費に該当すると反論した。

審判所はまず、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入すべき「販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用」(所得税法37条1項)に該当するためには、客観的にみて、不動産事業と直接関係し、かつ、業務遂行上必要であることを要し、その判断は、個別具体的諸事情に即して客観的に行われるべきとした。
その上で、XらはAの死亡後、一連の法的手続きを執り、並行して新たな賃借人への貸付けに取り掛かっており、貸付業務以外の用途に転用したとも認められないこと、加えて、Xらは貸付業務遂行には各建物を収去する必要があったところ、相続財産法人は無資力で回収が見込めない状況にあり、客観的にみても各建物収去費用はXらが自ら負担するほかなかったものと認められることなどから、不動産所得を生ずべき業務は各建物の収去に至るまで継続していたと認定。原処分庁の各更正処分は違法であるとして、処分の全部を取り消した。