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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和元年9月6日裁決)

2020年06月08日
専従者給与額算定上の類似同業者の抽出方法を不相当と判断
令和元年9月6日裁決
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歯科医院を営む歯科医師の配偶者(青色事業専従者)の給与のうち、類似同業者の平均額を上回る部分が、事業所得の金額の計算上必要経費として認められなかった。審判所は、大筋で原処分庁を支持したものの、類似同業者の抽出方法を一部不相当と判断、課税処分を一部取り消した。
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歯科医師Xは、Z歯科医院(平成20年開業)を営んでいた。Xの配偶者で、Xと生計を一にするAは、歯科衛生士として、開業当初からZ歯科医院の事業に従事。青色事業専従者として、歯科衛生士としての業務に加え、レセプト請求業務、銀行手続業務、窓口受付事務、使用人の給与計算事務、現金出納帳の作成等の経理事務を行っていた。
原処分庁は平成30年6月、Aの労務の性質及び労務提供の程度とZ歯科医院の他の使用人の給与の状況を比較検討したほか、(1)国税局管内で歯科医業を営む個人事業者であること、(2)青色申告者で青色申告決算書の提出者であること、(3)歯科医業に係る年間の売上金額がXの2分の1以上、2倍以下の者であること(いわゆる倍半基準)、(4)青色事業専従者が歯科衛生士の資格を有する配偶者のみの者であること、(5)歯科医師の資格を有する者を常勤で雇用していない者であること――の基準を設け、類似同業者を抽出。類似同業者の青色事業専従者が支払を受けた給与の状況に照らして、Aに係る青色事業専従者給与額が著しく高額であり、労務の対価として相当であるとは認められず、適正給与相当額を超える部分の金額については必要経費に算入することができないとして、平成26年、28年分の所得税等についての更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。Xは処分を不服として、その全部の取消しを求め、審査請求に及んだ。

審判所は、まず、Aの労務の性質について、Z歯科医院の他の歯科衛生士はAが行っていた歯科衛生士業務のうち一定の補助業務等以外の業務にはほとんど従事していなかったこと、及びAは他の歯科衛生士への指示や新規採用された使用人への指導の中心的役割も担っていたことから、Z歯科医院の他の歯科衛生士の労務の性質とは異なると認めるのが相当とした。
また、Aがタイムカードを使用せず、事業に従事した時間を記録した証拠は存在しないことから、Aが事業に従事していた時間は客観的な証拠によって認定することはできず、労務提供の程度を明らかにすることはできないとした。
このため、Aの青色専従者給与額と労務の性質がAと最も類似するZ歯科医院の歯科衛生士が支払を受けた給与の額とを比較する方式(使用人給与比準方式)ではなく、Aの青色専従者給与額と、Xの類似同業者の事業に従事する青色事業専従者が各年において支払を受けた給与の額の平均額とを比較する方式(類似同業専従者給与比準方式)により、Aの適正給与相当額を算定するのが相当であるとした。
その上で、原処分庁が採用した上記基準(5)については、雇用されている歯科医師の個別具体的な勤務時間等の勤務状況をその該当性の判断に用いていないため、抽出された類似同業者とXとの間に必ずしも類似性が認められるとは言い難いと指摘。上記基準(5)を除く(1)~(4)の基準を調整し、適正給与相当額を算定したところ、原処分庁の認定額は下回ったため、その差額部分に係る課税処分を取り消した。