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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和元年11月28日裁決)

2020年08月07日
取得価額不明の上場株式の譲渡所得は名義書換日の相場で算定
令和元年11月28日裁決
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相続により取得した上場株式を源泉徴収選択口座と簡易申告口座の2つの特定口座及び一般口座に移管後、所得税の申告をしなかったため、原処分庁から更正処分等を受けた。この際、原処分庁は、株式の実際の取得価額が判明しなかったとして概算取得費を用いて計算したが、納税者は株式取得時期の相場を基に算定すべきと主張。審判所は、納税者の主張を認め、総平均法により算定すべきと判断した。
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平成28年1月、Xは、母の相続により上場株式等を取得した。同年3月、XはG証券で簡易申告口座(簡易口座)を開設したほか、H証券でも源泉徴収選択口座(源泉口座)を開設した。また、その他の一般口座に移管した株式もあった。
Xは、相続した上場株式等をこれら口座等に移管した後、同年中に一部を除き譲渡。このうち、源泉口座の損失は約183万円、配当等は約53万円であった。
Xは、同年分の所得税等を確定申告により期限内に申告したが、このとき、これら相続により取得した上場株式等に係る譲渡所得又は譲渡損失、配当所得、利子所得の金額のいずれも申告しなかった。その後Xは、簡易口座における譲渡所得の金額、源泉口座の損失及び配当等金額を含めた修正申告をした。

原処分庁は、源泉口座の損失及び配当等金額を修正申告に計上することはできず、また、譲渡所得の金額が申告漏れであるなどとして、所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分等をした。なお、更正処分に当たっては、上場株式の譲渡所得の金額の計算上、取得費に算入する金額について、できる限りの調査を尽くしたものの大部分の実際の取得価額が判明しなかったとして、概算取得費を用いて計算した。
Xは(1)損失及び配当等金額が修正申告に計上できないとしたこと、(2)株式取得費の計算に概算取得費を用いたこと、の2点を不服とし、処分の取消しを求め、審査請求に及んだ。

審判所はまず、(1)修正申告において上場株式等に係る譲渡所得等及び配当所得等の金額の計算上、本件の損失金額及び配当等金額を算入できるかについて、Xが源泉口座において生じた損失金額及び配当等金額を当初申告において含めていないことから、租税特別措置法37条の11の5第1項及び8条の5第1項の規定に従い、源泉口座における譲渡所得及び配当所得等の金額の計算上、これらを除外して確定申告することを選択したものと認められる等とし、したがってXは、修正申告において損失及び配当所得、利子所得の金額を算入することはできないとしてXの主張を一蹴した。
次に、(2)本件各株式の取得費の算定に当たって概算取得費を用いることができるか否かについては、「取得価額を直接的に立証する客観的な証拠資料等が確認できない場合、株式の名義書換日を調べて取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも合理性を有する」と指摘。
その上で、本件各株式の発行会社11社のうち8社分については名義書換日が判明し、3社分については判明しなかったため、8社分については概算取得費によらず、総平均法に準ずる方法により算定することが相当であると判断(ただし、8社中2社は概算取得費の方が高いため、概算取得費により算定)、原処分の一部を取り消した。