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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和2年3月5日裁決)

2020年11月18日
NPO法人の指定管理者事業が収益事業から除外されるか
令和2年3月5日裁決
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NPO法人が地方公共団体から指定管理者として指定され、スポーツ施設の管理業務を行っていたが、事業従事者の半数以上が高齢者だったため、収益事業の除外規定に該当するとして更正の請求を行ったが、税務署からは却下された。審判所は、特定従事者に支給した給与額が利益金額に占める割合は2分の1に満たなかったため、収益事業の除外事由には該当しないと判断した。
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X法人は、広く一般市民に対して、各種スポーツ大会・教室等の企画運営等を目的として平成25年に設立された特定非営利活動法人である。X法人はA市から、A市施設を管理運営する指定管理者に指定された。
X法人は、本件指定事業を収益事業として平成29年3月期、平成30年3月期の法人税の確定申告をしたが、平成30年8月、収益事業として申告した事業は法人税法施行令5条2項の適用を受けるため収益事業には該当しないとして、更正の請求を行った。しかし、原処分庁は更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったため、これを不服として審査請求に及んだ。

争点の一つは、X法人の行う事業は法人税法施行令5条2項2号の規定に該当するか否か。
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(収益事業の範囲)
第5条 (省略)
2 次に掲げる事業は、前項に規定する事業に含まれないものとする。
二 公益法人等が行う前項各号に掲げる事業のうち、(1)その事業に従事する次に掲げる者がその事業に従事する者の総数の半数以上を占め、かつ、(2)その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているもの
(以下略)
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X法人は、以下のように主張し、本件事業が収益事業から除外されるとした。
(1) 本件事業に従事する者は、その半数以上が高齢者である。
(2) 特定従事者の「生活の保護に寄与している」か否かについては、収益事業から生じた剰余金額等の処分可能な金額に占める特定従事者に支給する給与等の割合を基に計算し、当該事業に係る収入金額又は利益金額の「相当部分」を特定従事者に給与等として支給しているか否かにより判断すべきであるが、「相当部分」といえるかどうかは、剰余金額等の処分可能額について、税引前当期正味財産増減額の金額に特定従事者の給与等の金額のみを加算した金額を使用した上で緩やかに判断するのが相当である。

これについて審判所は、法人税法施行令5条2項2号の趣旨は、本来収益事業に該当する内容の事業であっても、その事業について、従業員の半数以上の者を特定従事者として雇用し、これらの者の生活の保護に寄与しているものである場合には、その公益性を考慮し、社会政策上法人税を課すことは相当でないとして、これを収益事業から除外したものと解されると指摘。
その上で、X法人の本件事業が特定従事者の「生活の保護に寄与しているもの」に該当するかを判断するに当たっては、収益事業から生じた剰余金等の処分可能な金額に占める特定従事者の給与等の割合を基に判定することになるが、この判定に当たっては、本件各事業年度における本件事業に係る利益の額は、特定従事者分支給額を含む人件費支給総額を差し引いた金額であることから、収益事業から生じた剰余金等の処分可能な金額は、「本件事業に係る利益の額に人件費支給総額を加えた金額(本件比較利益額)」とすることが相当であるとした。
そして、特定従事者分支給額と本件比較利益額とを比較すると、特定従事者分支給額の本件比較利益額に占める割合は、平成29年3月期は39.57%、平成30年3月期は47.56%と過半にも満たず、X法人が本件事業に係る剰余金等の処分可能な金額の相当部分を特定従事者に給与等として支給しているとは認められないと判断。
本件事業は、特定従事者の「生活の保護に寄与しているもの」とはいえず、収益事業の除外要件に該当しないとして、X法人の請求を棄却した。