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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和2年3月10日裁決)

2020年11月27日
工事着手前の修繕費計上でも隠蔽仮装行為には該当せず
令和2年3月10日裁決
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事業年度末時点で工事に着手していなかったにもかかわらず、相手方に請求書を発行させた上、修繕費に計上して損金算入した行為は隠蔽仮装に該当するか否かが争われた事案で、審判所は、少なくとも期末時点で工事の準備作業を行っていたことから着工前に請求書を発行していたとしても不自然とは言い切れないと認定、課税処分は違法として取り消した。
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不動産売買・管理業を営むX社(3月決算法人)は、所有していた集合住宅に雨漏りが発生していたため、その防止工事をA社に相談。平成30年1月13日に見積書の交付を受け、ほどなく工事の実施を依頼した。A社は受注後、3月末までに下請業者の手配や近隣住民への説明その他施工に向けた準備に取り掛かった。

同年4月頃、A社はX社に対し、「納品日」欄に「3.30」、「商品名」欄に「修繕工事」、「今回ご請求高」欄に「3,132,000」と記載された平成30年3月31日付の請求書を発行。その後、修繕工事を開始し、同年7月末までに工事が完了。X社は同年9月28日に修繕工事の代金を支払った。
X社は本件修繕費につき、同年3月31日付で「修繕費」勘定に計上し、平成30年3月期の法人税の所得金額の計算上、損金に算入した上、確定申告を行った。原処分庁は平成31年2月、本件修繕費の損金算入を否認し、重加算税の賦課決定処分等を行った。X社はこの
処分に納得せず、審査請求に及んだ。

原処分庁は、本件修繕工事は期末時点で着工すらされていないにもかかわらず、X社はA社に請求書の発行を依頼し、納品日を「3.30」とした虚偽の請求書を発行させたと指摘。これは「相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成」、つまり「隠蔽仮装」に該当すると主張した。

これについて審判所は、本件修繕工事については、請求人代表者が平成30年1月13日付の見積書の交付を受けてほどなく工事を発注し、A社は同年3月31日(事業年度終了の日)までに下請業者の手配や近隣住民への説明その他施工に向けた準備に取り掛かるとともに、同年4月頃には請求人代表者の求めに応じて本件請求書を発行、7月末までに工事が完了し、9月に代金が決済されているという事実経過をみると、A社がX社の求めに応じて請求書を発行したことについては、現に、A社が本件修繕工事の実施に向けた準備作業を行っていたところに、X社から依頼があったからこそ、請求書を発行するに至ったのであるから、本件修繕工事につき、A社により施工されることが確かなものとして施主であるX社側から依頼があれば、竣工前に請求書を発行したとしてもあながち不自然とは言い切れず、また、「納品日」欄に記載されている「3.30」については、A社の請求書発行に係るシステムの便宜上「3.30」と入力されたにすぎない可能性も否定できないと指摘。
そして、請求書の「納品日」欄が直ちに本件修繕工事の完了日を示すと認めるに足りる証拠はないから、「納品日」欄に「3.30」と記載がされているからといって、直ちに虚偽のものであるとまでは評価できないと強調した。
さらに、X社が請求書の「納品日」欄に本件修繕工事の完了日として「3.30」と記載することを依頼した事実に関する証拠は存在せず、隠蔽仮装の事実があったとは認められないとして、X社の請求を認め、課税処分を違法として取り消した。