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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和2年4月17日裁決)

2021年03月17日
相続財産を口座から出金した行為は相続財産の処分に該当せず
令和2年4月17日裁決
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相続放棄の申述をした相続人に対し、すでに相続財産の処分等を行っているため単純承認をしたとみなされ、相続放棄はできないとして差押処分が行われた。審判所は、相続人の口座に振り込まれた被相続人への支払金員相当額を引き出した事実等は、法定単純承認事由となる相続財産の処分に該当しないとして、差押処分の全部を取り消した。
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請求人Xは、平成31年1月に死亡した甲の配偶者である。
甲は生前、A社の代表取締役を務めていたが、平成22年2月、A社の滞納国税の保証人として、その納付義務を負うこととなり、破産手続の免責許可の決定を受けていた。
また甲は、H社と顧問料を月額100万円とする顧問契約を締結していた。顧問料のうち50万円は、相続開始直前においては口座振込にて授受されていた。残りの50万円から源泉所得税等を控除した残額は、H社の甲に対する貸付金の返済に充てられていた。
さらに甲は、自身の死後も、Xとの間の末子が成人するまでの間、その生活援助のため引き続き毎月50万円を振り込むよう、H社の代表取締役Kに依頼していた。依頼のとおりKは、相続開始後の平成31年1月25日にも、50万円を同口座に振り込んだ。Xは、毎月50万円の振込みは甲の給与の一部と認識しており、50万円を口座より出金をした。
平成31年2月、原処分庁は、甲の相続に伴い、Xを含む法定相続人全員に対し、甲の滞納国税の納付義務が承継される旨を通知し、その不動産を差し押さえた。
平成31年3月、Xは、相続開始後である平成31年1月25日に振り込まれた分については相続財産に該当することを知り、翌日Kに50万円を返金した。
その後Xは、相続放棄の申述を行い、受理された後に、差押処分に不服があるとして審査請求に及んだ。

原処分庁は、平成31年1月25日に振り込まれた50万円は、甲が受け取るべき顧問料が原資であり、Xは相続財産であることを認識していたにもかかわらず受領し、また口座から出金したこと等から、Xの行為は相続財産の処分(民法921条1号)にあたり、法定単純承認事由に該当する等として、滞納国税の納付義務を承継する等と主張した。

審判所はまず、平成31年1月25日に振り込まれた50万円は、甲とH社間の顧問料のうち50万円を振り込むとする委任契約に基づくものであり、その原資が報酬債権であることから、相続財産に当たると認定した。
ただし、以下のことから、Xの行為は相続財産の処分に該当せず、その相続放棄の申述は有効であり、差押処分は違法であるとして、原処分の全部を取り消した。
(1) 平成31年1月25日の振込みは委任契約に基づくKの行為であって、Xの行為ではない。
(2) Xが口座より50万円を出金しても、保管の態様が払戻請求権から現金に換わるだけであって、占有権が変更されるわけではない。
(3) Xは平成30年12月25日、X名義のM銀行の預金を解約し、約950万円の現金を受け取っている事実が認められることからすると、口座から出金した50万円は封筒に入れたまま使わずに残していた旨のXの答述は不合理とはいえず、答述の信用性を否定し、出金した50万円を請求人が一部でも費消したことを認めるに足りる証拠はない。