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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和2年4月21日裁決)

2021年04月09日
契約期間徒過後まで賃料収入が維持されていたとは認められず
令和2年4月21日裁決
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不動産所得を全く申告していなかった納税者に対し、所得税の決定処分等が行われた。納税者は自らが代表を務める法人を介して不動産の賃貸を行っていたが、ある時点からは法人との契約も更新していなかった。原処分庁は契約期間徒過後も以前と同じ賃料が維持されていたとの認定をした上、不動産所得の計算を行ったが、審判所は、原処分庁の認定には客観的証拠がないとして、納税者が主張する賃料収入を相当と認めた。
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請求人Xは、複数の所有土地に係る不動産貸付業を営む個人事業者。また、不動産の賃貸等の事業を目的とする法人F社の代表取締役である。
Xは、父G及びGが代表取締役を務めるH社が、平成17年~平成22年の間、Xに無断でX所有の各土地を駐車場として貸し付け賃料収入を得ていたとして、賃料収入に相当する損害賠償金を求め、地裁に提訴した。地裁は、GとH社に損害金及び弁護士費用並びに遅延
金の支払を命じた。GとH社は控訴したが高裁はこれを棄却し、損害金及び遅延金の支払を命じる判決が確定していた。

平成22年6月、Xは、土地を賃貸する賃貸借契約書をF社と締結した。その契約期間は平成24年6月までであった。
平成23年3月、Xは、平成22年7月より不動産貸付業を開始したとする青色申告承認申請書を原処分庁に提出し、その承認を受けた。また、平成23年5月、個人開業届出書を提出した。
平成26年7月、F社は、X所有土地を転貸する賃貸借契約をN社と締結した。
Xは、平成25年分~平成29年分の所得税等、及び同課税期間の消費税等の申告において、確定申告書を期限内に提出しなかった。
原処分庁は実地調査の上、平成31年2月、期間後申告の勧奨を行ったが、Xが応じなかったことから、平成31年3月、青色申告の承認の取消処分並びに所得税等と消費税等の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分を行った。
Xは処分を不服とし、取消しを求めて審査請求に及んだ。

主要な争点は、各年分の不動産所得の金額はいくらか、である。
原処分庁は、(1)損害金及び控訴棄却判決の言渡し日までの遅延金は、XがGとH社から控訴棄却判決により支払を受けることとなったものであるから、平成25年分の不動産所得に含まれる、(2)2社間の転貸借契約により、XとF社は、F社との賃貸借契約を更新したものと推認することができ、平成24年7月以後の各年も同額の賃料収入を得ていた、等と主張した。
これに対しXは、(1)訴訟は平成17年に起こった事件についてのものであり、時効を主張するまでもなく、損害金及び遅延金に課税することはできない、(2)原処分の推認による賃料収入の金額には根拠がない、等と反論した。

審判所はまず、(1)所得税法は権利確定主義を採用しており、損害金については判決の確定をもって収入の原因となる権利が確定したと解するのが相当とした上で、損害金及び判決確定日までの遅延金について、GがXに無断で土地を貸し付けるという不法行為に基づくものであることから、判決が確定した平成25年分の不動産所得に計上すべきとした。また、判決確定翌日以後の元本に対する遅延損害金については、発生した各年分の不動産所得に計上すべきとした。
また、(2)原処分庁の主張のとおり、少なくとも平成26年9月~平成29年12月の間、XとF社の間に賃貸借契約が存在したと認められるものの、平成27年10月以降の収支がマイナスとなっていること等から、当初の賃貸借契約と同一条件で更新されたとは認められないとして、Xが主張する賃料収入により計算するべきとした。
その上で、各年分の不動産所得の金額を算出したところ、平成26年分~平成29年分の金額について原処分庁の算出額を下回ったため、同期間の所得税等の無申告加算税の賦課決定処分の一部と、平成25年~平成29年課税期間の消費税等の決定処分等の一部を取り消した。