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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和2年7月7日裁決)

2021年04月23日
所得拡大促進税制の適用可否をめぐり課税処分を取消し
令和2年7月7日裁決
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納税者が経営する診療所の勤務医を、診療協力として別病院の診療に従事させたことに伴い、別病院から支給された協力金が、旧措置法10条の5の3(いわゆる「所得拡大促進税制」)2項第3号かっこ書に規定する「その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当するかどうかが争われた。審判所は当該金額に該当するとして納税者の主張を認め、原処分庁の主張を斥けた。
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請求人Xは個人開業医を営んでおり、青色申告の承認を受けていた。
平成26年7月、Xは、A医師と雇用契約を締結。A医師の給与は年俸制が採用され、賞与を支給する定めはなかった。
平成27年5月、Xは別病院であるH会と「医療機関診療協力要綱」を締結。この協力要綱に基づきA医師がH会の診療に従事した場合、1回当たり4万円の協力金がH会からXへ支払われていた。
XはA医師に対し、平成28年に180万円、平成29年に48万円の賞与を支給し、各年分の事業所得の金額の計算上、必要経費に算入した。
Xは、平成29年分の所得税等の確定申告において、《雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除》(旧措置法10条の5の3)(現10条の5の4《給与等の支給額が増加した場合の所得税額の特別控除》)を適用。その際、旧措置法10条の5の3第2項3号かっこ書(現10条の5の4第3項4号かっこ書)の規定(「その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」を「雇用者給与等支給額」から控除する規定)に従い、協力金の額を控除して計算し、特例の適用を行った。
原処分庁は、協力金はH会が協力要綱に則り「委託費」としてXに支払ったものであって、A医師の給与賃金及び賞与に充てるために支払ったものとは認められず、旧措置法が規定する「その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当しないとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。
Xは処分を不服とし、審査請求に及んだ。

審査請求でXは、(1)本件協力要綱は、A医師の在籍出向のために作成されたものであり、XはH会が負担するA医師の給与を本件協力金として受領したものであるから、本件協力金は実質的に出向に伴う給与負担金であること、(2)旧措置法の規定の趣旨は、自己の経済的負担に基づく実質的な給与支給額を税額控除の対象とするため、給与等に充てるため他の者から収受したことが明確な金額の控除を要件としていることから、本件協力金は「その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当し、特別控除の適用があると主張した。

審判所は、XがA医師に雇用契約書上は賞与を支給する定めがないにもかかわらず、協力要綱に定められた「1回当たり4万円」に診療回数を乗じた額を賞与として支給していることから、Xは委託費をA医師の支払に充てるため受け取ったものと認められ、H会が委託費として経理処理をしたことに左右されず、旧措置法10条の5の3が規定する「その給与等に充てるため他の者から支払を受ける金額」に該当し、特別控除の適用があると認められると判断。
これを適用してXが納付すべき額を計算したところ、更正処分の金額を下回ったことから、更正処分の一部と、賦課決定処分の全部を取り消した。