自動車整備業の類似同業者には自動車販売業も含まれる
令和3年3月4日裁決
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確定申告をしていなかった自動車整備業者が、調査時に帳簿書類等を提示しなかったため、推計の方法により事業所得の金額を計算し原処分を行われた際の、事業所得金額の推計における類似同業者の抽出基準が適正かどうかが争われた。審判所は、原処分の抽出基準に合理性があるとした。
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Xは自動車整備業等を営む個人事業者である。Xは、平成21年頃の事業開始以降、所得税等及び消費税等の確定申告書を提出していなかった。
令和元年9月、原処分庁は税務調査を開始。Xに見積書、請求書、納品書、領収証、帳簿等の提示を求めたが、Xはこれらを保存していないとして提示しなかった。
このため原処分庁は、平成26年分以降の所得税等に係る事業所得の金額を推計の方法によって算定し、令和2年3月、所得税等及び消費税等の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分を行った。その推計は、自動車小売・自動車卸売・自動車整備・車両修理業を営む個人で、兼業しておらず、青色事業専従者を有していない者等を類似同業者の抽出基準とするものであった。
Xはこの処分を不服とし、審査請求に及んだ。
Xは、
(1)原処分庁が算定した総収入金額には、売上ではない自動車税等の預り金が含まれている。
(2)顧客からの依頼を受けて自動車を売買した委託販売については、委託販売手数料のみが
Xの売上となり、総収入金額に含まれる。
(3)自動車販売は附帯的なものであり、Xが行っている事業は自動車整備業のみであるから、
原処分庁の類似同業者の抽出基準には合理性がない等と主張した。
審判所は、調査の結果、
(1)原処分庁の算定した総収入金額には、自動車税等の預り金が含まれていると認められ、各年分の総収入金額から差し引くべきと認められる。
(2)Xが販売先・購入先から委託販売手数料を受け取る契約をしていた事実は認められず、委託販売であったとする証拠もないことから、Xが自動車の委託販売を行っていたとは認められない。
(3)Xは自動車整備業だけでなく自動車の販売も行っていると認められ、原処分庁の抽出基準には合理性がある。
として、審判所で認定した事業所得に基づき納付すべき税額を計算し、原処分額を下回った一部について取り消した。