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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和3年5月20日裁決)

2022年01月18日
住職から寺院への資金移動は相続税の不当減少に該当せず
令和3年5月20日裁決
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寺院の住職が生前、寺院に対して行った贈与によって、住職の親族等の相続税の負担が不当に減少する結果となるかどうかが争われた。審判所は、住職とその親族が、寺院の業務運営、財産運用、解散した場合の財産帰属等を事実上私的に支配している事実は認められないとして、原処分庁の主張を斥けた。
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X寺は、宗教法人法に基づく宗教法人であり、法人税法に規定する公益法人等である。
平成27年4月、X寺の住職(代表役員)甲は、甲名義の定期預金口座を解約し、X寺名義の定期預金として預け入れた。また、甲名義の国債の売却代金や投資信託の解約金を甲名義の普通預金口座に入金した上で、預金を払い出しX寺名義の口座へ入金した。
平成28年8月、甲は死亡し、その相続が開始した。
原処分庁は令和2年1月、X寺名義口座への資金移動は持分の定めのない法人に対する財産の贈与であり、甲の親族の相続税の負担が不当に減少する結果になるとして、相続税法66条(人格のない社団又は財団等に対する課税)4項の規定により、X寺を個人とみなし、平成27年の取得財産についての贈与税の納付の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を行った。
X寺は処分を不服として再調査請求を行ったものの棄却されたため、審査請求に及んだ。

原処分庁は、X寺が相続税法施行令33条(人格のない社団又は財団等に課される贈与税等の額の計算の方法等)3項1号~3号の各要件(相続税等の負担が不当に減少する結果となると認められない要件)をいずれも満たしていないことに加え、
(1) 甲の口座からX寺の口座への資金移動時、X寺の役員の3分の2を甲とその親族で占めており、甲らはX寺の業務を自由に裁量できる立場にあったこと
(2) X寺は甲らに対し、生活費(月20万円程度)の供与や、敷地内建物を居住に利用させる
という特別の利益を与えていたこと
(3) X寺の寺院規則によれば、X寺が解散した場合、甲らに財産が帰属することとなる状況にあること
――等の事情から、甲からX寺への資金移動により、甲の親族について、相続税法66条4項に規定する「特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となる」に該当する等と主張した。

審判所はまず、甲からX寺への資金移動は贈与に該当し、相続税法施行令33条3項1号~3号の規定にも該当しないと認定した上で、
(1) X寺の業務運営及び財産管理については、3名の総代が相当程度に監督しているものと認められるほか、甲らが私的に業務運営や財産管理を行っていたとまでは認められない
(2) 資金移動の時点において、甲らがX寺の財産から私的に財産上の利益を享受した事実は見当たらない
(3) 寺院規則によれば、解散には責任役員の定数の全員及び総代並びに門徒の3分の2以上の同意等が必要であることから、甲らが恣意的にX寺を解散することでその財産を私的に支配できるとはいえない
――等として、相続税法66条4項に規定する「相続税等の負担が不当に減少する結果となる」とは認められないと判断。原処分の全部を取り消した。