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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和3年6月24日裁決)

2022年02月07日
売買不成立を知らなかったことは過少申告の正当理由
令和3年6月24日裁決
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被相続人の生前、その孫へ売買による移転登記がされた家屋について、その売買が無効であり、家屋は相続財産に当たることが申告期限後に発覚。過少申告として課税処分された。審判所は、相続時点の登記上家屋は孫名義であったこと、名義変更の以前から被相続人ではなく孫が居住していたこと等の理由から、家屋を申告しなかったことに国税通則法65条4項の「正当な理由」があると認めた。
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平成29年7月、被相続人甲が死亡し、その相続が開始した。相続人は甲の子であるX(税理士)とAの2名である。
甲の生前である平成25年7月、甲が所有する家屋について、甲の孫C(相続人Aと配偶者Bの子)へ、売買を原因とする移転登記が行われた。なお移転登記の以前から、甲は老人ホームに入居しており、家屋には孫C夫妻が居住していた。
平成26年3月、Xは甲の関与税理士として、甲の平成25年分の所得税等の確定申告書を作成し、原処分庁へ提出した。この申告書には、平成25年分の甲に係る不動産所得、雑所得(公的年金等)とともに、孫Cへの家屋売買に係る譲渡所得についても申告されていた。
相続開始後の平成29年11月、Xは甲の「固定資産(補充)課税台帳登録事項証明書」を取得したところ、家屋の記載はなかった。
平成30年2月、Xは原処分庁に甲の相続に係る申告書を、その後4月に修正申告書を提出した。
なお、XがAらの各口座の取引履歴又は預金通帳の写しをAから入手したのは、申告期限後であった。
令和元年11月、Xは原処分庁より、家屋の売買は配偶者Bが甲の承諾なく行ったものであって、その売買代金は、甲名義の口座から配偶者Bが出金した資金を孫Cの口座に入金したものを原資としており、その実態は甲の資金が還流しているに過ぎなかったという説明を受けた。
翌12月、家屋の移転登記は錯誤を原因として抹消された。
令和2年6月、原処分庁は、家屋は相続財産に当たる等として、相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分等を行った。
Xは処分を不服とし、再調査請求及び審査請求に及んだ。

Xは、相続開始時点において孫C名義となっていた家屋について、
(1) 固定資産(補充)課税台帳登録事項証明書において証明されていなかった
(2) Aとは世帯を別にしており、家屋の売買が行われていないことを把握することはできなかった等として、国税通則法65条《過少申告加算税》4項に規定する「正当な理由があると認められるものがある場合」に該当する等と主張した。

これに対し原処分庁は、甲やAらの各預金口座等を調査すれば、家屋の売買代金が実質的に支払われておらず甲と孫Cとの間の売買契約が成立していないことを把握できたにもかかわらず、その確認を怠った等として、「正当な理由」に当たらない等と反論した。

審判所はまず、
(1) 相続開始時点において家屋の登記上の名義は孫C名義であり、X自身が関与税理士として家屋の売買に係る譲渡所得の申告を行っていた
(2) 売買以前から、家屋には甲ではなく孫Cが居住していた
(3) 他の孫も甲から土地の遺贈を受けていることから、孫Cが家屋を譲渡されても不自然ではない
こと等から、Xは、甲と孫Cとの間の売買契約が有効に成立し、家屋の所有権が移転したと誤信せざるを得ない事情があったと認定。
加えて、家屋の売買代金が実質的に支払われていないことを把握し得たのが、相続税申告期限後であったことから、Xが家屋について申告しなかったことにより相続税の申告が過少申告となったことには「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情」があり、Xに過少申告加算税を賦課することは不当又は酷であって、Xには「正当な理由」があったと認められるとして、家屋に係る過少申告加算税の賦課決定処分を取り消した。