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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和3年7月12日裁決)

2022年04月07日
夫名義口座から妻名義口座への入金は「みなし贈与」に該当せず
令和3年7月12日裁決
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夫婦の家計を管理する妻が、夫名義の預金口座から妻名義の証券口座へ預金を移して金融商品を購入し、妻の所得として申告した行為が、「みなし贈与」に該当するかが争われた。審判所は、妻が私的に当該金員を費消した事実がない等の各事情を考慮し、みなし贈与に該当しないと判断した。
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夫甲と妻Xは夫婦である。甲の生前、夫婦の家計は甲の給与等の収入によって賄われており、Xは甲名義の口座から甲に一定額を小遣いとして交付する等、家計全般を管理していた。
平成27年3月、Xは、甲名義の預金口座から出金した金員をX名義の証券口座に入金し、いったんファンドを購入した後に換金して5社の株式、外貨ファンド、毎月分配型投資信託を購入した。同様に5月にも、甲の同口座から出金した金員をX名義の投資信託口座に入金し、追加型投資信託を購入した。
平成28年3月、Xは、配当所得の還付を求め、これら購入した株式等の所得税の確定申告をした。
平成29年2月、甲は死亡し、その相続が開始した。妻Xは他の相続人らと共同して、期限内に相続税の申告をした。その際、上記入金額は相続税の課税価格に含まれていなかった。
令和2年4月、Xは上記入金額を原資とする有価証券等の価額等が申告漏れであったとして、相続税の修正申告をした。
これに対し原処分庁は同年6月、甲名義口座からX名義口座へのこれら入金は対価を支払わないで利益を受けたと認められ、相続税法9条の規定によりXが贈与により取得したものとみなされるとして、贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分を行った。
Xは、一連の財産管理・運用は、甲の指示又は包括的同意もしくは意向を忖度したものにすぎず、みなし贈与には該当しない等として、審査請求に至った。

原処分庁は、
(1)Xが自身の判断で取引を行っていたこと
(2)投資信託の分配金等がX名義口座に入金されていたこと
(3)分配金等がXの所得として確定申告されたこと
を根拠に、甲名義口座からX名義口座への入金は、相続税法9条規定の「対価を支払わないで利益を受けた場合」に該当すると主張した。

これに対し審判所は、財産の帰属の判定において、財産の名義が誰であるかは重要な一要素となり得るものの、我が国において、自己の財産をその扶養する家族名義の預金等の形態で保有することも珍しいことではなく、特に夫婦間においては、一方が他方の財産を、その包括的同意又はその意向を忖度して管理及び運用することはさほど不自然なものとはいえないから、これを殊更重視することは適切ではないと指摘した上で、次のように判断し、原処分の全部を取り消した。
(1)Xは甲の財産管理を主体的に行っており、全財産がXに帰属していたと認められないから、X自身の判断で取引を行った事実をもって利益を受けたとはいえない。
(2)X名義口座に入金された金員をXが私的に費消した事実が認められず、財産管理・運用の範疇を超えるものとはいえない。
(3)確定申告は「申告をすれば税金が還付される」との銀行員の教示に従い深く考えずに行ったものとするXの主張が、不自然とまではいえない。
等の各事情を考慮すると、甲の財産は、Xの口座においてそのまま管理されていたものと評価するのが相当であり、Xに贈与と同様の経済的利益の移転があったものと認めることはできず、相続税法9条規定の「対価を支払わないで利益を受けた場合」に該当しない。