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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和3年9月17日裁決)

2022年05月30日
贈与当時未成年であった子名義の預金は相続財産に含まれず
令和3年9月17日裁決
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被相続人が、4人の子に毎年一定の金額を贈与する旨を記した贈与証を作成した上で、子名義の口座に毎年入金していた預金について、相続財産に含まれるかどうかが争われた。審判所は、贈与開始当時成年であった子に対する入金は、受贈者の合意がなく贈与が成立していないため相続財産に含まれるが、当時未成年であった1人の子への入金については、親権者の同意があったため贈与が成立しており、相続財産には含まれないとして、原処分庁の主張を斥けた。
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甲には妻Aとの間に嫡出子BとCがいた。また、Dとの間にも非嫡出子EとFがおり、甲はEとFを認知していた。そのため甲の相続発生時、その共同相続人は妻A、B、C、E、Fの5名であった。
甲は生前、平成13年8月吉日付で、「平成13年度以後、毎年8月に4人の子各々に一定額を贈与する」という内容の「贈与証」と題する書面を作成していた。贈与証には、甲の署名押印だけがなされていた。なお、平成13年当時、末子のFは未成年であった。
同月、Dは甲の依頼により、同じ銀行の支店に4人の子名義の普通預金口座をそれぞれ開設し、以後平成24年まで毎年、甲の口座から同額を出金し、開設した4口座に入金することを続けた。
平成29年1月、甲が死亡し、その相続が開始した。
同年10月、遺産分割協議が成立した。遺産分割協議書には、これら4口座の預金は含まれていなかった。
相続人らは、相続税申告書の作成を税理士に依頼し、期限内に申告をした。
本相続について調査を行った原処分庁は、平成13年~平成24年の各年において甲と4人の子との間に贈与契約は成立しておらず、子名義の預金は相続財産に含まれる等として、その他の問題もあわせて過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分等を行った。
相続人らは処分を不服として、審査請求に及んだ。

子への贈与のうち、争点となったのは長子Bと末子Fに対する贈与。
原処分庁は、書面による贈与が成立したと認められるためには、その前提として贈与者と受贈者の合意が求められ、その上で贈与者の意思表示が書面によりされていることが必要となると指摘。よって、いかに贈与者の意思表示が書面により確認されたとしても、Bが、本件贈与証に対する受諾の意思表示をしていたと認められる証拠がなく、本件贈与証による当事者間における贈与の意思の合致が認められない場合には、甲とBの間で書面による贈与契約は成立していないことになり、甲の相続財産に含まれると主張した。
また、Fに対する贈与に関しても、贈与契約自体が成立していないとして、同様に甲の相続財産に含まれるとした。

審判所はまず、Bに対する贈与に関しては、本件贈与証には受贈者の署名押印はなく、Bは、調査開始後の令和元年9月まで本件贈与証の存在を認識していなかったことからすると、本件贈与証の存在のみをもって直ちに甲とBとの間で毎年のB名義口座への入金に係る贈与が成立していたと認めることはできないと判断。原処分庁の主張を認めた。
一方、Fに対する贈与に関しては、口座が開設され毎年の入金が開始された平成13年当時Fは未成年であり、その成人の日まで唯一の親権者がDであったことから、民法824条(財産の管理及び代表)により、DはFが成人するまでの間、法定代理人としてその財産に関する法律行為や管理を行う立場にあったと指摘。DはFの法定代理人として甲からの贈与の申込みを受諾し、贈与契約に基づく履行として、Dが管理するF名義口座に入金をしていたものと認定した。
さらに、「Dが贈与証の内容を理解していなかった」とする原処分庁の主張についても、贈与証の内容が特別困難とはいえないほか、Dが関連法人の経理担当として勤務していたことから、理由がないとしてこれを斥けた。
よって、F名義預金はFに帰属し、相続財産には含まれないと認定。原処分のうち、F名義口座の預金に係る課税処分を取り消した。