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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和3年11月19日裁決)

2022年07月28日
医師が健康診断業務の対価として受領した報酬は給与所得
令和3年11月19日裁決
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医師が複数の医療機関等にて行った健康診断業務の報酬が、事業所得と給与所得のいずれに該当するかが争われた。医師は、ある団体との地位確認請求の判決にて「労働者ではない」ことが確定していることを根拠に、全ての報酬が給与所得ではなく事業所得に当たると主張したが、審判所は医師と各医療法人等との契約や勤務等の実態から、医師が自己の計算と危険において業務を行っていたとは認められないと判断、給与所得に該当するとした。
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Xは、職業紹介会社より紹介を受けた医療法人等にて、健康診断業務等に従事する医師である。平成28~30年においてXは、健康診断業務等に伴う収入について、それぞれ期限内に所得税の確定申告を行っていた。
平成30年6月、Xは、Aセンターに対し提起していた労働契約上の地位確認等を求めた請求が、地裁判決にて「Xの労働者性を肯認するには至らない」として棄却され、確定したことから、自身が事業所得者であることが確定したとして、平成28年分の申告について更正の請求を行った。
令和元年8月、原処分庁は、更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。また同日、平成29、30年分の申告における健康診断業務による収入は給与所得に該当する等として、所得税等の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
Xはこれらの処分を不服とし、審査請求に及んだ。

Xは、上記地裁判決はXとAセンター間の法律関係を包括的に判断した結果、Xの立場を医療法人等から業務を請け負って収入を得る事業所得者であると確定させたものであり、この法律関係はXが締結した他の医療法人等との契約と同内容であるから、Xはこれら全医療法人等との間において事業所得者に該当し、その収入は事業所得に該当する等と主張した。
これに対し原処分庁は、上記地裁判決の効力は本件と当事者及び審理対象を異にするものであり、収入が事業所得・給与所得のいずれに該当するかは個別具体的に判断すべきであり、本件では給与所得に該当する等と反論した。

審判所は、前提として、
・事業所得の本質は、自己の計算と危険において独立して反復継続して営まれる業務から生ずる所得である点にある
・給与所得の本質は、自己の計算と危険によらず、使用者の指揮命令や空間的・時間的拘束に服して提供した労務自体の対価として使用者から受ける給付である点にあると強調。収入が事業所得と給与所得のいずれに該当するかは、
(1) 変動する収益や費用が誰に帰属するか、費用が収益を上回るリスクを誰が負担するか
(2) 指揮命令を受けて行っているか
(3) 空間的・時間的拘束を受けて行っているか
等を総合的に考慮し、個別具体的に判断すべきとした上で、同期間にXが健康診断業務を行った7つの医療法人等それぞれにおける(1)~(3)の実態を検討。その全てにおいて、
・報酬は従事時間等に応じてあらかじめ決められた対価が支払われていたこと
・各医療法人等から業務に必要な器具等の貸与等及び交通費等の支給を受けていたことから、Xが健康診断業務から一般的に生じ得る危険を負担したことはなく、あわせて
・各医療法人等から業務内容・従事時間・従事場所等の指定を受けていたことから、Xが指揮命令に服し、空間的・時間的拘束を受けていたと認定。
よって、Xが健康診断業務で得た収入は給与所得に該当するとし、原処分庁の各処分はいずれも適法であるとして、Xの請求を斥けた。