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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和3年12月17日裁決)

2022年08月25日
漁業者による海苔の製造は水産養殖業か食料品製造業か
令和3年12月17日裁決
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海苔養殖業者が使用する全自動乾海苔製造装置が、減価償却費の計算において食料品製造業用設備(耐用年数10年)と水産養殖業用設備(耐用年数5年)のどちらに該当するかが争われた。審判所は、養殖業者が製造した乾海苔は直ちに食用に供されるものではなく、二次加工業者による乾燥を経なければ市場には流通しないことなどから、同装置は水産養殖業用設備に該当すると判断した。
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Xは、海苔養殖区域において海苔養殖業を営む個人事業者である。
Xは、平成28~30年分の所得税等の申告後、原処分庁より調査を受けたため、令和2年5月、各修正申告書を提出した。
原処分庁は、令和2年6月、各修正申告に基づき過少申告加算税の各賦課決定処分を行った。
さらに同年11月、Xが使用する「全自動乾海苔製造装置」等の設備について、減価償却資産の耐用年数に関する省令の別表第二(機械及び装置の耐用年数表)の番号1「食料品製造業用設備」(耐用年数10年)に該当するとして減価償却費を計算し、各年分の所得税等について各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を行った。
Xは処分を不服とし、設備は全て耐用年数省令の別表第二の番号28「水産養殖業用設備」(耐用年数5年)に該当するとして、審査請求に及んだ。

Xは、海苔養殖業は生海苔を板状に乾燥し完成品化するまでが業であり、これは日本標準産業分類の大分類「B-漁業」の中分類「04-水産養殖業」に該当することから、同装置は水産養殖業用設備(耐用年数5年)に該当する等と主張した。
一方、原処分庁は、耐用年数通達1-4-2(いずれの「設備の種類」に該当するかの判定)は基本的に、事業者の業種ではなく、その設備の使用状況等から業用設備の区分を判定すべきことを明らかにしたものであるところ、全自動乾海苔製造装置が製造する最終製品は乾海苔であって、これが水産食料品に該当することは明らかであり、水産食料品を製造する業は食料品製造業であるから、同装置は日本標準産業分類の大分類「E-製造業」の中分類「09-食料品製造業」用に通常使用されていると認められ、食料品製造業用設備(耐用年数10年)に該当する等と反論した。

審判所は、原処分庁と同様、耐用年数省令別表第二の機械・装置の業用設備の判定は、その業種ではなく、資産の使用状況等から社会通念に照らし、これが日本標準産業分類によるいずれの業種用として通常使用されているかにより判定すべきとした。
その上で、同装置は、Xが自家取得した原藻を自宅敷地内作業場において乾燥させ、漁業協同組合へ出荷できる乾海苔にするため、海苔養殖業者のみに通常使用されており、この一次加工後の乾海苔は直ちに食用に供されるものではなく、二次加工(食用加工)は漁業協同組合での落札後に流通業者によって行われることに注目。海苔養殖業者が使用する全自動乾海苔製造装置と流通業者が使用する乾燥機は構造が異なり、両工程を一体として行う機械は存在しないことからすれば、両者はその目的を異にするものと認定。同装置は、日本標準産業分類の大分類「B-漁業」の中分類「04-水産養殖業」の業種用として通常使用されていると認められ、水産養殖業用設備に該当すると判断した。
よって、耐用年数を5年として計算した各年分の減価償却費の金額に基づき、各年分の事業所得の金額及び所得税等の納付すべき税額等を計算したところ、平成28年分の修正申告に係る納付すべき税額等を下回り、平成29~30年分の各更正処分に係る納付税額をいずれも下回ったことから、平成28年分の更正処分の全部と、平成29~30年分の更正処分の一部、及び平成28~30年分の過少申告加算税の全部を取り消した。