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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和3年12月1日裁決)

2022年09月16日
法令等による汚染除去の義務なくても土壌汚染控除OK
令和3年12月1日裁決
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地中に特定有害物質を含有しているものの、法令等により汚染の除去等の措置を講ずる義務は生じていない評価対象地について、浄化・改善費用相当額を控除すべきかどうかが争われた。
審判所は、相続開始日において基準を超える特定有害物質を含有していた事実が認められることから、評価に当たり浄化・改善費用相当額を控除すべきとした。
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甲は平成28年1月に死亡し、その相続が開始した。相続人は長男Xと長女Aである。
甲の相続財産には、土地1~4(立体駐車場、平置き駐車場、駐輪場)が含まれていた。XとAは遺言公正証書に基づき、土地1~3をXが、土地4をAが、それぞれ取得した。
Xは、土地1~4に係る土地区画整理事業が施行された際、土壌汚染が懸念される土砂によって埋め立てられたと想定されたこと等から、土地1~4の汚染の状況等を把握するため、指定調査機関に調査を依頼したところ、すべての土地から土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質が検出された。Xが各業者に土壌汚染対策工事の見積りをとったところ、土地1・2では4億656万円、土地3では6,750万円、土地4では1億6,600万円(いずれも税抜)との見積り額であった。
Xは、相続税の期限内申告でのX及びAの取得財産価額の合計額の算出において、汚染がないものとした通常の土地評価額から、「土壌汚染控除」として、X分は3億8,361万円余、A分は1億1,473万円余を、それぞれ控除した。
これに対し原処分庁は、令和2年5月、各土地の評価において土壌汚染控除はできないとして相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。
これに対しXは令和2年12月、再調査決定を経た後の処分を不服として、審査請求をした。

土壌汚染地の評価については、国税庁が「土壌汚染地の評価等の考え方について(情報)」(資産評価企画官情報第3号ほか 平成16年7月5日)を発出しているが、この情報では、土壌汚染地の評価額については、土壌汚染がないものとした場合の評価額から、土壌汚染の浄化・改善費用に相当する金額等を控除して評価する旨及び控除する浄化・改善費用相当額は見積額の80%相当額とする旨示している。また、土壌汚染地について行われる措置は、法令に基づく措置命令、浄化・改善費用とその措置により生ずる使用収益制限に伴う土地の減価とのバランスを考慮し、その上でその土地について最有効使用ができる最も合理的な措置を専門家の意見をも踏まえて決めることになる旨の考え方も示した。
原処分庁は、土壌汚染地については上記情報に基づき評価すべきとした上で、土地評価にて浄化・改善費用相当額の控除が認められるためには、法令又は契約等により、汚染の除去等の措置を講ずる義務が生じ、その除去等の費用が発生することが確実であることにより、汚染が評価対象地の価格形成に影響を及ぼしている必要があると指摘。具体的に本件では、土地1~4が土壌汚染対策法に規定する要措置区域に存するか否かで判断すべきところ、これら土地は要措置区域に存していない等として、控除は認められないと主張した。

審判所はまず、評価通達1の(3)は、相続財産の評価に当たり、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する旨を定めており、通常の評価額から浄化・改善費用相当額を控除できるかについて評価通達には特に定められていないものの、上記情報のとおり、課税実務においては浄化・改善費用相当額(工事見積額の80%相当額)を控除して評価する取扱いが認められていることを確認。
本件では、指定調査機関の調査により、土地1~4の地中に土壌汚染対策法所定の基準を超える特定有害物質が含有されていた事実が認められたため、土壌汚染のある土地と認めるのが相当であり、浄化・改善費用相当額を考慮すべきであるとした。
その上で、汚染の除去等の措置には「掘削除去措置」「汚染の封じ込め措置」など複数あり、どのような措置を採ることが相当であるかについては、措置後の土地の減価や汚染の程度など諸事情を総合勘案して、措置後に土地を最有効使用ができる最も合理的な措置によるべきであるとして、Xが採った措置を具体的に検証。土地1~4が都市計画法の定める用途地域上「商業地域」に存していること、容積率が600%又は800%であることなどの諸事情により、その最有効使用は「中高層の建築物の敷地」であると認められることから、Xが汚染の「掘削除去措置」を前提に浄化・改善費用を算出したことにも特段不合理な点は見当たらない等とした。
なお、原処分庁の主張については、相続財産の価額は財産の客観的な交換価値であると解されることから、土壌汚染が土地の価格形成に影響を及ぼす場合を、法令により除去等の費用が発生することが確実である場合に限定する理由はない等として、これを斥けた。
以上を踏まえ、Xが納付すべき税額を計算したところ、Xの期限内申告における税額を下回ったことから、課税処分の全部を取り消した。