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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和4年1月12日裁決)

2022年10月28日
実質所得者課税適用には証拠不十分として全部取消し
令和4年1月12日裁決
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不動産会社が行った不動産取引に係る収入について、原処分庁は法人代表者や関係者による申述等を根拠に、実態としては取締役が共通する別の不動産会社に帰属するとして課税処分を行った。審判所は各関係者の申述をそのまま信用することができないとして、その他証拠資料や不動産業務の遂行状況等も総合判断の上、原処分庁の主張を斥けた。
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X社は、不動産の売買・賃貸借・管理・仲介等の業務を行う青色申告法人であり、宅地建物取引業の許可を受けている。その代表取締役は甲である。
平成21年8月、X社は同じく不動産業のA社の全発行済株式を取得し、甲はA社の取締役に就任した。
平成23年、喫茶店を営んでいたBは、甲の紹介により、甲専属の運転手としてX社での勤務を開始した。同年11月、甲から「A社の代表者にならないか」との誘いを受け、A社の代表取締役に就任した。
平成24年4月頃から平成29年6月頃までの間、A社を契約名義人とする土地売買等の取引がなされた。これら取引に係る振込決済には、A社名義の2つの普通口座が使用された。
令和2年9月、原処分庁は、X社はA社の繰越欠損金を利用して納税を免れることを目的として、不動産に関する知識のないBを名義だけの代表取締役として就任させたものであり、A社名義で行われた土地売買取引等に係る収益はX社に帰属する等として、X社に対し、青色申告の承認取消処分、法人税等及び消費税等の更正処分等、並びに源泉徴収に係る所得税等の納税告知処分等を行い、さらにX社が事実を隠ぺい又は仮装していたとして法人税の重加算税等の賦課決定処分を行った。
処分に対しX社は、事実誤認がある等として、その取消しを求め審査請求を行った。

原処分庁は、Bの「私のA社での仕事は主に運転手であった」「甲の指示でA社口座から出金し甲に手渡す仕事があった」等の申述(ただし後に否定)や、X社関係者の「A社は会社として何もしておらず、取引は全てX社が行っていた」等の申述等を根拠に、A社名義で行われた土地売買取引等はいずれも実際にはX社が主体となって業務を遂行しており、またX社が取引に係る収益を享受していたというべきであるから、A社の総勘定元帳に記載の収益はX社に帰属する等と主張した。

審判所は、法人税法11条(実質所得者課税の原則)について、法律上の所得の帰属の形式と実質が異なるときには実質に従うという租税法上の当然の条理を確認的に定めたものであるとして、本件での収入の帰属者が誰であるかは、法人の事業の経緯、取引に係る業務の遂行状況、業務に係る費用の支払状況等の事実関係を総合して、業務の主体が誰であるかにより判断するとして、以下のように検討した。
(1) Bは当初、原処分の主張に沿う内容の申述をしていたが、その後、申述の際には甲に対する悪感情があったことから、甲が不利になればと調査官が記載したものを全て認めてしまったとして、一転して当初申述を翻しており、当初申述をそのまま信用することはできない。
(2) X社関係者による原処分庁の主張に沿う内容の申述は、いつの時点の状況であるか明確ではなく、具体性と客観性を欠き、信用して判断の基礎とすることはできない。
(3) A社が平成22年6月期に繰越欠損金を有しており、平成25年6月期から平成29年6月期までの間に損金算入したこと等のみをもって、X社が納税を不当に免れるためにBをA社代表取締役に就任させたとはいえない。
(4) 取引に係る契約書・重要事項説明書の一部の作成がX社のパソコンで行われたこと等のみをもって、取引の全てがX社の主体であったとはいえない。
(5) A社名義の各口座から現金が引き出された事実は認められるものの、甲がA社の預金通帳を管理していた等の申述は信用できず、現金がX社に渡ったとする的確な証拠もなく、X社が収益を享受していたとは認められない。
これらを総合的に判断すると、X社が不動産取引に係る業務を主体的に行ったとは認められず、またX社が収益を享受したとも認められないことから、本件収入はX社に帰属せず、取引の一部を隠ぺい又は仮装した事実も認められないと認定。
X社の青色取消処分、各更正処分、各納税告知処分、各賦課決定処分の全部を取り消した。