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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和4年2月15日裁決)

2022年12月16日
原資を特定できない現預金等は相続財産に当たらず
令和4年2月15日裁決
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相続発生前の数年間に、被相続人の配偶者により被相続人や家族各人名義の各口座から出金された後、その原資や所在が不明となった現預金等が、相続財産に含まれるか否かが争われた。審判所は、各口座の預貯金の原資が特定できないことや、配偶者もかつて収入を得ており両者の収入が混在していること等から、相続財産に当たるとは断定できないとして、課税処分を全部取り消した。
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平成30年2月に甲が死亡し、その相続が開始した。共同相続人(Xら)は、甲の配偶者X1、税理士である長男X2、二男X3の3名である。
X1は、平成26年2月から相続開始日までの間、甲名義の普通預金等3口座とX1・X2・X3名義の各口座との計6口座から、合計約8,500万円を現金で出金していた。
X1とX3から税務代理の委任を受けていたX2は、相続税申告に先立ち、X1が管理していた通帳等及び銀行の取引履歴を確認し、相続開始日における甲名義預貯金の残高と、X1・X2・X3及び甲の孫A(X2の子)名義の各預貯金の残高を把握した。
X2は、甲とX1の過去の収入等を考慮し、両者の資産形成への貢献度を検討した上、口座名義にかかわらず、甲名義預貯金の残高約4,800万円、X1・X2・X3・A名義の各口座の預貯金約1億4,000万円、さらに現金600万円を加算した金額(約1億9,500万円)を相続財産に計上して、申告書を法定申告期限までに原処分庁へ提出した。
令和元年11月、原処分庁の調査担当職員は自宅に臨場して、X1及びX2と面接。調査担当職員はX1が出金した現金の行方について確認したところ、X1は現金6,500万円を提示した。
令和元年12月、X2は、新たに現金1,200万円が見つかったとして、自身のPCに保存された現金1,200万円の画像データを提示した。
令和2年4月、原処分庁は、申告書に計上されていない現金7,100万円(=6,500万円+1,200万円-600万円)、及びX1名義の定期預金とX3名義の預貯金について申告漏れを指摘し、Xらに対し翌月、更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
令和2年8月、Xらは、各更正処分等を不服として審査請求をし、また同日、X2を総代として選任し、その旨を審判所に届け出た。

原処分庁は、相続税申告書に計上されていない現金7,100万円と、X1名義の定期預金及びX3名義の預貯金は、出えん者や被相続人及びX1の収入比率などからその帰属を判断すると、いずれも甲に帰属する財産である等と主張した。
これに対しXらは、申告書に計上した預貯金の原資には甲及びX1の収入が混在しており、預貯金の発生時期は古くその原資の負担者を明確に特定できないのであるから、現金7,100万円の原資がX1による出金であることをもって、その出えん者が甲であるとはいえない等と反論した。

審判所はまず、一般的には財産の名義人がその所有者であるが、預貯金は現金化や別名義への預け替えが容易にでき、また家族名義を使用することもよく見られ、その名義と実際の帰属とが齟齬する場合も少なくなく、ある財産が被相続人以外の名義であったとしても相続開始時において被相続人に帰属するものであったと認められる場合には、相続税の課税対象となる相続財産に当たると解されると確認。被相続人以外の名義である財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かは、財産又はその原資の出えん者、財産の管理・運用状況、財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と財産の名義人や財産の管理・運用者との関係、財産の名義人がその名義を有することとなった経緯等を総合勘案して判断するのが相当であるとした上で、本件の場合は、
(1) 現金7,100万円の出金元である、申告書に計上された預貯金口座で管理・運用されていた預貯金の原資が特定できないことや、X1も収入を得ていたと認められること等から、現金7,100万円には甲とX1の収入が混在している可能性を否定できない。また、審判所においても甲とX1の収入比率等により合理的にあん分することもできない
(2) 同様に、X1名義及びX3名義の2口座の預貯金についても原資を特定できず、甲とX1の収入が混在している可能性を否定できない。合理的にあん分することもできないとして、申告書に計上された金額を超えて、これら現金と預貯金が甲に帰属する相続財産として存在していたと断定することはできない
として、各更正処分等を違法と認定し、その全部を取り消した。