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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和4年6月24日裁決)

2023年03月10日
妻が相続財産を記載したノートの未提出は隠蔽・仮装に当たらず
令和4年6月24日裁決
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相続税申告書を作成するための資料収集等をした被相続人の妻が、一部の株式を相続財産に含めなかったことが、隠蔽又は仮装に該当するか否かが争われた。審判所は、妻が税理士に指示されたもの以外の資料も収集に努めたことや、税務調査で自発的に資料を提示したこと等から、隠蔽又は仮装に該当しないとした。
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甲は、平成29年11月に死亡し、その相続が開始した。相続人は、甲の妻A及び長男Xである。相続開始日において、Aに株式取引の経験はなかった。
平成29年12月~翌2月頃、AとXは、甲の生前から関与があった税理士に相続税の申告を依頼。税理士は、相続財産把握のため、甲宛の郵便物を調べるとともに、証券会社から株式に係る残高証明書を取得・提出するようXとAに指示した。あわせて、甲以外の名義であっても、原資が甲のものや、甲が管理運用していたものは、相続財産に含まれる旨を説明した。
Aは税理士の指示に従って、甲の父母の各名義、及びX名義の株式について把握に努め、その銘柄・株式数・配当金額等を2冊のノートに記載した。
平成30年3月頃、Xは、申告書の提出までのスケジュールについて税理士から説明を受けた。その際、相続財産のうち、預貯金と有価証券についてはXとAが把握し、不動産については税理士が把握するとの役割が決められた。Xは多忙を理由として、甲宛の郵便物から相続財産を把握して残高証明書を取得することはAに委ねた。平成31年3月、Aは、甲の父名義の株式と甲名義の株式について、A名義の口座へ振り替える手続きを行った。また同年4月、甲名義の株式について、単元未満株式の買取請求手続を行った。
XとAは、収集した残高証明書等及び所有株式数証明書を、税理士に提出。ただし、ノートについては提出しなかった。税理士はこれらの提出物に基づき申告書を作成し、Xはこれを期限内に提出した。
原処分庁は、令和元年9~12月にかけて調査を行い、Aに対し、ノートには記載があるにもかかわらず、相続財産として申告されなかった株式があると指摘した。指摘を受けてXは、令和元年12月、修正申告書を提出した。
令和2年1月、原処分庁は、相続税申告書に甲名義の株式の一部等が計上されていないとして、Aに国税通則法68条1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があり、Xが申告書を作成するための資料収集等をAに委任しており、XはAと同視可能である者と認められることから、Xにも隠蔽又は仮装に該当する事実があったとして、過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分を行った。Xはこの処分に不服があるとして、審査請求をした。

原処分庁は、
(1) Aがノートにて各株式を含む相続財産を管理しており、そこには、証券会社に保管がない株式に関しても株主名簿の管理機関である信託銀行名や口座振替手続の具体的な記載がされており、また、Aが一部の株式について口座振替手続や買取請求手続を行ったことから、Aが各株式の存在を十分に認識していたと認められるにもかかわらず、申告されていない株式があったこと
(2) Aがノートや一部の所有株式証明書等を税理士に提出しなかったこと
等から、Aは当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき過少申告をしたと主張した。

審判所は、そもそもノートについて、記載の株式情報は分散しており整理されていないとして、単なる備忘メモと認定。
一部の所有株式証明書等が税理士に提出されなかったことについては、各株式に書類送付先住所が旧住所であったものや、保管する証券会社がなく信託銀行も管理していないものが含まれていたことから、Aが各株式をすべて把握できたと誤認した可能性を否定できないと判断した。
また、Aが、税理士から指示のなかった一部の所有株式数証明書等についても取得の上、税理士らに提出しており、また調査の際には調査担当職員に対して、調査の一助とすべく自発的にノートを提出していること等から、各株式に係る残高証明書等や所有株式数証明書等を漏れなく取得しているか、また申告書に計上した財産と税理士らに提出した証明書の内容とが一致しているか等の確認をAが怠ったことは認められるものの、各株式を相続税の申告財産から除外するため、あえて所有株式数証明書等を取得しなかった又は税理士にノート等の資料を提出しなかったとまでは認め難いと判断。その他、隠蔽の行為そのものや、当初から過少申告を意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動に出たものと認めるに足る事情もないことから、Aに「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はなく、したがってXについても、隠蔽又は仮装に該当しないと認定。重加算税賦課決定処分のうち、過少申告加算税相当額を超える部分の金額に違法があるとして、その一部を取り消した。