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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和4年5月10日裁決)

2023年04月05日
相続財産のうち一部・少額の貯金のみの無申告は隠蔽に当たらず
令和4年5月10日裁決
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被相続人名義の複数の貯金のうち、ある口座についてのみ申告されていなかったことが、隠蔽又は仮装にあたり重加算税の対象となるどうかが争われた。審判所は、その金額が他の預金額の5%程度に過ぎないことや、金融機関との間の折衝がうまくいかず残高証明書等の発行を受けられなかった可能性があること等から、隠蔽又は仮装に当たらないとした。
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平成30年11月、甲は死亡し、その相続が開始した。共同相続人は、甲の妻X及び長男である。
平成31年1月、Xは長男の依頼により、3つの銀行等の甲名義口座について、相続開始日の残高証明書を取得した。その合計額は、約2億8,200万円であった。また同月、XはA銀行の甲名義貯金約1,300万円を、同行のX名義口座に払い戻す相続手続を行ったが、このときは残高証明書の発行について依頼をしなかった。
令和元年9月、Xは、相続税の申告書を提出した。申告書に添付の財産明細書や遺産分割協議書に、A銀行の貯金についての記載はなかった。
令和2年12月、原処分庁の税務調査を受けた後、Xは、申告漏れがあったとして、修正申告を行った。
令和3年1月、原処分庁は、A銀行貯金に係る無申告が隠蔽に当たるとして、重加算税の賦課決定処分をした。
Xはこの処分を不服として再調査を請求した後、再調査を経た後の賦課決定処分に不服があるとして、審査請求を行った。

原処分庁は、
(1) Xが甲名義の預貯金のうちA銀行の貯金についてのみ残高証明書を取得することなく相続手続を行うという特異な行動をしていること
(2) XがA銀行の貯金の存在を認識していたにもかかわらず、相続税申告書の作成を依頼した会計事務所に対して伝えていないことが、当初から相続財産を過少に申告する意図を外部からもうかがい得る特段の行動に当たり、国税通則法68条1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった等と主張した。
一方Xは、貯金口座の解約により必要な手続は完了したものと勘違いし、残高証明書を取得しなかったにすぎず、特異な行動ではない等と反論した。

審判所は、たしかに、Xが各預金口座に係る残高証明書の発行依頼を行うのとほぼ同時期、A銀行の残高証明書のみ発行依頼をしなかったのは不自然としつつも、
(1) その金額(約1,300万円)が3銀行の甲名義口座の総額(約2億8,200万円)の5%程度に過ぎないこと
(2) XがA銀行の払戻金に相当する金銭を払い出していないこと
(3) 税務調査の際、Xが申告漏れを自ら申し出ていること
等から、相続税申告からあえてA銀行の貯金のみを除外しようとする意図があったとは認められないと判断。
また、XがA銀行に係る手続を行うため金融機関を訪れた際、一般的な相続手続の案内を受けているが、Xが残高証明書の発行を依頼したと誤解したものの実際には伝わっていなかった可能性や、残高証明書発行依頼を失念してしまった可能性も否定できない等として、一連の行為において当初から相続財産を過少に申告する意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと評価すべき事情は認められないと認定した。
よって、賦課決定処分のうち過少申告加算税相当額を超える部分を違法とし、その処分を取り消した。