お問い合わせ

  • 〒101-0032
  • 東京都千代田区岩本町1-2-19
  • 株式会社日本法令 ZJS会員係
  • 会員直通:03(6858)6965
  • FAX番号:03(6858)6968
お電話での受付時間
平日 9:00~12:00
  13:00~17:30

お問い合わせはこちら

SSL グローバルサインのサイトシール

このシステムは、SSL(Secure Socket Layer) 技術を使用しています。ご入力いただいたお客様情報はSSL暗号化通信により保護されております。SSL詳細は上のセキュアシールをクリックして確認することができます。

税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和4年7月1日裁決)

2023年06月13日
使用人兼務役員ではない取締役への報酬の過大判定
令和4年7月1日裁決
---------------------------------------------------------
法人税法上の使用人兼務役員に該当しない取締役に対する役員給与について、代表者が作成した書面に役員報酬として記載された金額が、いわゆる形式基準限度額に当たるかどうかが争われた。審判所は、報酬の算出過程や書面の作成過程から、書面に記載の金額は給与の積算根拠にすぎず、いわゆる形式基準限度額には当たらないと判断した。
---------------------------------------------------------
X社は、平成12年1月に設立された特例有限会社であり、その発行済株式の8割を株主等3人が保有する同族会社である。その役員は、代表取締役A、取締役B、監査役の3名である。
このうち取締役Bは、X社の設立当初から「〇〇長」の肩書きで使用人として従事しており、取締役就任後も「〇〇長」の職務を継続し、「役員で労働者扱いの者」として労働保険に加入していた。なおBは、法人税法34条6項に規定のいわゆる「法人税法上の使用人兼務役員」には該当しない。
X社の定款では、報酬及び退職慰労金について、「取締役の報酬及び退職慰労金は、社員総会の決議をもって定める。」と定められていた。またX社の設立前に開催された、平成12年1月の第1回定時社員総会において、取締役の受けるべき報酬額を年額5,000万円以内とし、各取締役の割当額は代表取締役に一任することが決議されていた。以後、この決議事項は改定されていない。
平成27年1月、Aは、取締役2名出席の会議を経て、平成27年2月1日以降支給されるBの役員給与の額について、役員報酬分(役員給与)と使用人分(基本給等)のそれぞれ月額を決定し、その内容を「取締役の報酬金額に関する決定書」(決定書)と題する書面に記載した。
その後X社は、Bに対し決定書記載の金額を上回る月額を実際には支払っていた。その際、実際に支払った報酬の内訳(役員給与と基本給等それぞれの金額)について記載した「支給明細書」と題する書面を別途作成し、決定書とともに議事録綴りに編てつしていた。
X社は、各事業年度の法人税等について、青色の確定申告書にて法定申告期限までに提出した。
原処分庁は令和3年8月、Bへの役員給与のうち不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されない等として、各事業年度の法人税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分等をした。
令和3年10月、X社は各処分に不服があるとして審査請求をした。

原処分庁は、Bが法人税法上の使用人兼務役員に該当せず、法人税法施行令70条1号ロのかっこ書の適用はないことから、Bに対して支給した給与額の合計額は全て役員給与となるため、いわゆる形式基準限度額(具体的には決定書に記載の金額)を超える部分については、不相当に高額な役員給与に当たる等と主張した。

一方、X社の代表取締役Aは、
・X社では従来からの使用人が取締役に就任する場合、その給与のうち使用人分については、取締役に就任する前の年収を12か月で等分した金額を基準にしており、Bの使用人分についても、その後の昇給等を経て現在の月額となったものである
・Bは、生産管理全般の責任者という使用人としての業務を継続しており、これに取締役の職務が加わっていることから、Bに支給している役員報酬及び基本給等は妥当な金額と考える
と答述した。

審判所は、Bが法人税法上の使用人兼務役員に該当しないとしても使用人としての職務を継続して行っており、労働保険等の取扱上は使用人兼務役員に該当するため決定書にBの使用人分を記載することは適当でないとAが判断したことから、Bへの報酬について決定書と支給明細書とに分けて記載したと認定。このような書面の作成経緯によれば、決定書に記載の金額はBに対する給与額の積算根拠にすぎないというべきであり、形式基準限度額とは認められない等と判断した。
よって、原処分庁の主張には理由がないとして、その全部又は一部を取り消した。