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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和4年12月14日裁決)

2023年06月30日
詐欺被害により稼働していない太陽光発電は事業に該当せず
令和4年12月14日裁決
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太陽光発電に係る取組について、所得税法27条に規定する「事業」に該当するかどうかが争われた。審判所は、太陽光発電の計画そのものが詐欺であり、客観的には請求人が大規模な太陽光発電設備等を取得しておらず、自宅屋根に設置した太陽光設備から生じる売電収入のみが稼働しているものの、その収入が少額であること等から、事業所得を生ずべき事業には該当しないと判断した。
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Xは、不動産賃貸業等を営む甲社の取締役であり、さらに不動産管理を業とする乙社の代表取締役でもある。
Xは、太陽光発電システム・省エネルギー装置・機器の販売等を行うB社との間に、A1市、A2市、A3市に設置の太陽光発電設備(A1~A3市設備)及びその発電事業者の地位等を購入するとする各契約書を取り交わし、平成27年~30年にかけて約4億2,300万円をB社に分割払いした。この際Xは、銀行から8,800万円の融資を受けている。なおB社は、後に破産手続きが開始されることとなる。
またXは、平成29年9月、代金762万円余にて、自宅の屋根に太陽光発電設備を設置した。
Xは、平成28年~令和元年分の所得税等について、青色申告にて、いずれも期限内に申告した。申告においてXは、太陽光発電に係る各設備の設置・発電・売電等の「一連の取組」に係る所得を事業所得とし、その費用を必要経費に算入した。
原処分庁は、実地の調査に基づき、一連の取組は所得税法27条1項に規定する「事業」とは認められず、損失の金額は雑所得の金額の計算上生じたものであるなどとして、Xに対し更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。
Xは、再調査請求の後、再調査後の処分に不服があるとして、審査請求に及んだ。

Xは、Xが行った太陽光発電に係る一連の取組は、向こう20年間にわたるシミュレーションに基づき利益等を見込んだ上で、資金調達を行って4箇所の設備を取得する等したものであり、規模からみても事業に該当する経済的行為であること、各設備は自然災害によって損壊する危険、システムの故障のリスクがあり、請求人はその危険を負っていた等と主張した。

一方、原処分庁は、
・調査の時点で、A1~A3市設備は存在しないか、又は他の者により管理・運営されており、Xが実際にはこれら設備から収入を得ておらず、そもそも各契約はB社代表取締役がXから代金を詐取する目的で締結したものと推認されること
・自宅の屋根に設置した設備は小規模かつ簡素なもので、その売電収入はいずれの年分においても同設備の減価償却費を下回る額にすぎないこと
等から、一連の取組は事業に該当しないと主張した。

審判所はまず、各提出資料及び調査により、XはA1~A3市設備については客観的には取得しておらず、自宅屋根設備のみ客観的に取得し、売電収入を得ていたと事実認定。所得税法27条1項に規定の事業とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務をいうと確認した上で、
・A1~A3市設備に係る取組は、客観的には何らの業務も営まれていなかったものであるから、事業に該当しない
・自宅屋根設備に係る取組は、太陽光発電に係る業務が行われていたと認められるものの、その売電収入は減価償却費にも満たず利益が生じていない。人的設備等も備えていない
・Xが2社の役員であり、その給与収入により生活の資を得ている
等の点を総合的に検討し、Xの一連の取組は事業に該当しないと判断。過少申告加算税の加重措置の適用が適切でなかった一部についてのみ、原処分庁を取り消した。