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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和5年2月16日裁決)

2024年01月26日
破産開始時に有する株式に係る剰余金の配当は課税対象
令和5年2月16日裁決
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請求人の破産手続開始決定後、請求人が保有する外国法人の株式についてなされた剰余金への配当について、課税所得に当たるか、また課税所得である場合、その源泉徴収義務及び申告・納付義務は請求人か破産管財人(外国法人の取締役)かが争われた。審判所は、配当は課税所得に該当するとした上で、配当の債権者は請求人であり、申告・納税義務等は請求人が負うと判断した。
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Xは、イギリス領に設立された甲社及び乙社の全株式を保有していた。
平成28年、地方裁判所は、Xの破産手続を開始した。破産管財人は弁護士のAである。A管財人は、甲・乙2社それぞれの取締役に就任していた。
令和2年、2社はそれぞれ、剰余金を原資とする配当をXに支払った。なお、これらの配当は、A管財人が決定した上で、支払に係る事務を行った。Xはこれらの配当について、同年分の所得として法定期限内に申告しなかった。
令和4年3月、原処分庁は、配当所得が生じているとして、Xに対し無申告加算税等の賦課決定処分をした。
Xはこの処分を不服とし、審査請求に及んだ。

Xは、
(1) 破産管財人が破産財団に属する株式を売買する場合のみならず、剰余金の配当請求権を行使して支払を受ける場合も、その行為は所得税法9条1項柱書及び同項10号が規定する強制換価手続による「資産の譲渡」に該当するので、本件の各配当の支払は非課税となる
(2) A管財人は、日本において、破産財団に属する株式の管理処分行為の一環として2社の取締役に就任し、各配当に関する政策・実務を決定し、担当し、その管理・支払をした上で、その受領もしていること等から、法的主体としては「国内において」各配当の「支払をする者」に該当し、所得税法181条1項に規定する源泉徴収義務を負う。各配当の申告・納税義務もA管財人が負う等と主張して、原処分の取消しを求めた。

審判所はまず、所得税法9条1項柱書及び同項10号は、資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合において、破産手続等の強制換価手続等による「資産の譲渡」による所得については所得税を課さない旨規定しているが、この「資産の譲渡」とは、資産の帰属主体たる地位や所有権を移転させる行為を指すと解するのが相当であることを確認。
本件における各配当は、配当を受ける権利の行使により支払われたものであり、各配当により各株式及びそれ以外の帰属主体たる地位や所有権はXから移転しないことから、各配当は「資産の譲渡」に該当せず、非課税とはならないことを明示した。
次に、A管財人が源泉徴収義務を負うかについて、たとえA管財人が2社の取締役であるという事情があるとしても、Xの破産管財人としてXが保有していた2社の各株式の管理処分権を有し、各配当を受領する権限を有しているにすぎず、XとA管財人の関係は法律上直接の債権債務関係に立たないものであることはもとより、これに準ずるような特に密接な関係にあるということもできず、所得税法181条1項に規定する「支払をする者」には該当しないことから、各配当が「国内において」支払われたか否かにかかわらず、A管財人は源泉徴収義務を負わないとした。各配当の所得についても、Xに帰属するので、A管財人は申告・納税義務を負わないとした。そのため、原処分は適法であるとして、Xの審査請求を棄却した。