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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和5年4月12日裁決)

2024年02月16日
過大徴収された源泉所得税は、国からは還付されず
令和5年4月12日裁決
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役員給与に係る源泉徴収がされた後に役員給与が減額されたため、会社に給与を返還。結果的に源泉所得税分が過大となったため、会社に返還を求めたものの支払われなかった。そこで更正の請求により課税庁側に過大徴収分源泉税の還付を求めたところ、課税庁はこれをシャットアウト。審判所は、過大徴収分の源泉所得税については源泉徴収義務者(会社)が返還すべきであり、国から直接役員への還付等は行わないとしつつも、役員給与減額後の所得税額等の再計算については、原処分庁は更正の請求時の資料を基に行うべきとした。
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Xは、平成26年6月~平成29年11月の間、A社の代表取締役として、役員給与(役員報酬及び賞与)の支給を受けていた。Xは、平成28年分・29年分の各年分の役員給与に係る所得税等を、A社により源泉徴収された。
平成29年、A社の株主Bは、A社を被告とし、平成27年~平成29年のXの毎月の役員報酬を増額する内容の株主総会決議等が存在しなかったことの確認を求め、地方裁判所に提訴した。
平成30年、A社、株主B、Xは、株主総会決議等が存在しなかった事実を相互に確認する内容で和解した。
同年、A社はXに対し、この和解内容を基に、Xが受領した役員給与の増額分について、不当利得返還請求訴訟を提起した。この訴訟は控訴され、令和3年、Xの敗訴にて確定したため、Xは役員給与増額分をA社に対し支払った。
同年4月、Xは、各年分の所得税等の更正の請求書を原処分庁に提出。請求の理由等の欄には「不当利得返還請求訴訟により確定した役員報酬の一部返還による」と記載していた。令和4年3月、原処分庁は、更正をすべき理由がないと通知したため、Xは同年5月、審査請求に及んだ。

Xは、過大となった源泉徴収税額について、A社に対し返還を求めたもののA社は応じず、また原処分庁に対しても「源泉徴収票不交付の届出書」を提出するとともに行政指導を求めたが是正には至らなかったとして、源泉徴収義務者であるA社が源泉徴収税額の精算をしない場合には、A社がXに役員給与を支払う際に徴収した源泉所得税を国は収納し利益を得ているのであるから、Xは更正の請求により源泉所得税額の還付を受けることができる等と主張した。

これに対し原処分庁は、所得税法120条1項5号が規定する「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」は、正当に徴収された又はされるべき所得税等の額を意味すると解され、源泉所得税の納税に関し、国と法律関係を有するのは源泉徴収義務者のみであって、国とその所得の受給者との間には直接の法律関係を生じないことから、Xと国との間で源泉所得税等の徴収過不足額を精算することはできない等と反論した。

審判所は、役員給与の返還後においては、源泉所得税の額は「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」とは認められず、誤って源泉徴収された金額となり、A社が国に対して誤納金の還付を請求することができ、他方、XはA社に対し、誤って徴収された金額の支払を直接に請求することになると明示。それゆえ、Xは国から過大徴収分の還付を受けることはできないと判断した。
また、原処分庁が総所得金額については何ら主張しないことについて釈明を求めたところ、原処分庁が「Xの源泉所得税の額等は原処分庁ではなく、源泉徴収義務者であるA社が再計算すべきであり、また、XはA社が発行した訂正後の源泉徴収票等を提出していないことから、原処分庁は再計算された所得税額や所得控除額等を確認することができない」と回答したことについて、所得税法120条1項5号の「正当に徴収された又はされるべき所得税等の額」の意味を踏まえると、Xが各更正の請求に関して提出した資料から正当に徴収されるべき所得税等の額が計算できる場合には、その額を基に確定申告書に記載された納付すべき税額が過大となっているか否かを判断することが相当であるとして、これを否定した。
最終的に、各年分のXが納付すべき金額を計算したところ、平成28年分で過大となっていたことから、この分を更正すべき理由がないとした通知処分は違法として取り消した。