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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和5年6月21日裁決)

2024年03月15日
連帯納付責任限度額からの控除額は現実に支払った金額のみ
令和5年6月21日裁決
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相続税の連帯納付義務の納付通知処分について、連帯納付責任の限度額の算定に当たり相続財産の価額から、相続財産の不動産登記のための司法書士報酬・登録免許税・印紙税等の見積額や、税理士報酬・弁護士報酬が控除できるかどうかなどが争われた。審判所は、控除できるのは現実に支払義務が生じた金額のみ等と明示した。
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被相続人甲が死亡し、その相続が開始した。相続人は、長男A、長女Xら6人である。長男Aは、相続開始時点において、国内に住所を有していなかった。また長男A以外の5人は、日本国籍を有しておらず、相続開始日まで日本に生活の本拠がない「制限納税義務者」であった。6人は、遺産分割協議に基づき分割した国内財産についてのみ、期限内に申告した。
その後、長男Aが死亡し、Aの唯一の相続人Bが相続税の納付義務を承継した。
しかし、BはAの相続税の納付を行わなかったため、令和2年6月、N税務署長はBに対し、相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。
さらにM税務署長は令和3年7月、Aが「非居住無制限納税義務者」に該当すると認定した上で、甲が所有していた日本国外の未分割の土地建物のうちAの法定相続分相当額が相続税の課税価格に算入されていないなどとして、Xに対し相続税の更正処分・過少申告加算税の賦課決定処分を行った。
Bの滞納国税を引き継いだ原処分庁は、令和3年12月、
・X以外の相続人に対して督促したが完納されていないこと
・Xには相続税法34条1項に規定する連帯納付義務が課されていること
等を記載した「相続税の連帯納付義務について」と題する文書をXに通知した。また、令和4年4月付で、
・Xが滞納国税の連帯納付義務を負うこと
・本来の納税義務者及び他の相続人と連帯して納付すべき限度の額(連帯納付責任限度額)は、相続により受けた利益の価額に相当する金額であること
等を、納付通知書により通知した。
Xはこの納付通知処分を不服とし、審査請求をした。

Xは、
(1)相続税法2条2項によれば、制限納税義務者には日本国内に所在する相続財産に対してのみ相続税が課されるところ、原処分庁による納付通知処分は、非居住無制限納税義務者である長男Aが相続により取得した日本国外に所在する財産に対して課税された相続税の納付の不履行に基づいてされており、結果的に国外に所在する財産に対する相続税を制限納税義務者であるXに課税していることになるため、違法である
(2)連帯納付責任限度額の算定に当たり、相続財産の価額から、相続財産の不動産登記を行う場合の司法書士報酬・登録免許税・印紙税等の各見積額、相続税申告等のための税理士報酬、納付通知処分等に対応するための弁護士報酬の各負担額が控除されていないことから、限度額は過大であり違法である
等と主張した。

審判所は、
(1)相続税法34条1項は、同一の被相続人から取得した相続財産に係る相続税に関して互いに連帯納付義務を負う者について、制限納税義務者を除外する旨の規定を特に設けておらず、また連帯納付義務が共同相続人中に無資力の者があることに備えて相互に各相続人等に特別の責任を課す趣旨に基づくものであることから、「連帯納付義務は無制限納税義務者であるBに対してのみ適用されるべき」というXの主張は採用できない
(2)相続税法34条1項規定の「相続等により受けた利益の価額に相当する金額」とは、相続人等が現実に取得した利益の価額に相当する金額であって、現実に支払義務が生じた金額を控除した後の金額と解するのが相当であり、また、相続税法基本通達34-1において「相続等により受けた利益の価額」とは、相続財産の価額から、相続税法13条に規定する債務控除の額のほか、相続財産に係る相続税額及び登録免許税額を控除した後の金額をいう旨定めているところ、
・本件の相続財産である不動産は、いずれも相続による権利の移転の登記がされていないため、司法書士報酬・登録免許税等の各見積額はXに現実に支払義務が生じたものとは認められない
・税理士報酬等は、相続税額のように納税義務に基づいて当然に負担が生じるものではないし、登録免許税額のように一般的に生じるものとも言い難いものであり、上記通達のいずれにも該当しないことから、Xの主張する各金額は、連帯納付責任限度額の算定に当たり相続財産の価額から控除することはできない
等として、原処分庁の処分はすべて適法と判断。Xの審査請求を棄却した。