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税理士向けニュース記事

注目判決・裁決例(令和5年6月27日裁決)

2024年04月26日
相続開始時点で債務は不確実のため、債務控除は不可
令和5年6月27日裁決
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被相続人が貸し付けていた倉庫に地盤沈下が発生したため、業者に修繕を依頼。契約は取り交わしたものの、工事着工前に相続が発生した。相続人は、工事の代金を債務控除して相続税の申告を行ったところ、原処分庁は債務控除を否認。審判所は、相続開始時点では支払を求められる状況ではなく、支払の要否も不確実であったから、確実と認められる債務ではないと判断。審査請求を棄却した。
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被相続人・甲は生前、所有する建物を賃貸倉庫としてA社に貸し付けていた。A社は自社の配送センター及び事務所として倉庫を使用していたが、建築コンサルタントから倉庫の土間床が地盤沈下しているとの指摘を受け、平成30年11月、甲に修繕工事の相談をした。
甲はこれを受けて、平成31年3月に修繕工事を行う旨連絡。令和元年5月に施工業者のB社との間で工事の注文書及び注文請書を取り交わし、請負代金を約2,200万円とする契約を締結した。なお、請負契約約款には、工事完了後、完了検査に合格したときに引渡し・代金の支払をする旨が定められていた。
当初、すぐに着工する予定であったが、夏場がA社の繁忙期であるため、同年10月の着工に変更された。
同年8月に甲が死亡。相続人は甲の3人の子であったが、賃貸倉庫はXが取得することとなった。
Xら相続人は相続税の申告に際し、上記修繕工事に係る請負代金相当額を債務控除した上、申告期限内に申告した。
なお、修繕工事は9月下旬から11月上旬までの間に実施された。
令和4年4月、原処分庁は上記請負代金相当額の債務控除はできないとして更正処分等を行った。
Xはこれを不服として、再調査決定を経て審査請求を行った。

Xは請負代金の支払債務について、相続開始日時点で請負契約が有効に成立していたことからすれば、甲は相続開始日時点でB社に対し未払金債務として請負代金の支払債務を負っていたため、請負代金の支払債務はその履行が確実であったと認められると指摘。また、甲はA社に対しても、民法606条1項の規定に基づき修繕義務を負っていることから、甲がA社に修繕工事の実施を連絡した時点(平成31年3月)で債務の存在は確実なものとなっていたと強調。請負契約を締結した時点でその履行は法的に拘束され、履行せざるを得ない蓋然性が整っていたと評価できることや、Xがその後請負代金を支払っていることからすれば、相続開始日時点においてその履行も確実であったと認められるため、債務控除することができると主張した。

審判所はまず、請負代金の支払債務について、請負契約では修繕工事の終了後、完了検査に合格することが代金請求及び支払の条件とされていたことに加え、着工日前である相続開始日時点において、甲はB社から支払債務の履行を求められる状況になく、その履行の要否すらも不確実な状況にあったと指摘。
その履行が確実と認められる債務には当たらないというべきと判断した。
また、賃貸倉庫に係る土間床の修繕義務については、A社は、土間床の沈下について建築コンサルタントから指摘を受けた以降も、少なくとも着工日までは、従前どおり使用収益していたことなどから、修繕工事は相続開始日の前後を通じ、あくまで甲とXによる任意の履行が事実上期待されていたにすぎないものであったとみるのが相当であり、土間床の修繕義務は相続開始日当時の現況に照らし、その履行が確実と認められる債務には当たらないというべきとして、Xの主張を斥け、債務控除は不可と判断した。