障害者雇用ビジネスをめぐる対応に関する案が示されました
12月1日、第11回今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会が開催され、いわゆる障害者雇用ビジネス(注1)について障害者雇用の「質」を高めていく観点からの対応案が示されました。
(注1)障害者の就業場所となる施設・設備(農園、サテライトオフィス等)および障害者の業務の提供等を行う事業。令和5年4月以降、短期間で大きく増加傾向にあり、法定雇用率を達成するために求められる現実的なハードル(職務の選定・開拓、採用、合理的配慮の実施、育成等)や障害者雇用に関するノウハウの不足により、利用企業にとってのニーズが増大していると考えられている。
障害者雇用をめぐっては、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律等の一部を改正する法律」(令和4年法律第104号)が令和5年4月1日以降順次施行され、法定雇用率を下記のように引き上げる等の改正がなされています。
●令和6年4月から令和8年6月まで
民間企業:2.5% 国、地方自治体:2.8% 都道府県等の教育委員会:2.7%
●令和8年7月以降
民間企業:2.7% 国、地方自治体:3.0% 都道府県等の教育委員会:2.9%
上記法案の附帯決議において、障害者雇用率制度における障害者の範囲や障害者雇用の質の観点など、引き続き検討が必要な事項について指摘がなされており、本研究会はこうした事項を検討するため設置されたもので、令和7年中を目途に取りまとめを予定しています。
第11回においては、令和4年以降行われてきた障害者雇用ビジネス実施事業者やその利用企業の実態把握により明らかになった次のような課題を踏まえ、障害者雇用の「質」を高めていく観点からどのような対応をとるべきか、案が示されました。
【障害者雇用ビジネスをめぐる課題】
●業務内容・就業場所の分離によるインクルージョンの観点からの課題・雇用責任の希薄化
→ 利用企業と障害者の間で業務内容・就業場所の分離があり、「障害の有無にかかわらず共に働く」という理念から離れている
→ 上記に伴い、利用企業側(経営層・従業員等)における障害理解が深まっていかない
→ 雇用契約を締結しながら、利用企業側の日常的な接点が薄いことにより、雇用する障害者のキャリア形成等を含めた雇用管理等の意識に至らない
●固定的な業務付与による能力開発の制限など、不十分・不適切な雇用管理
→ 付与される業務が固定化し、障害者の習熟に伴う職務内容のレベルアップが図られない
→ 利用企業側の組織的関与が低い等により、適正な雇用管理(採用・配置・育成等の計画的な実施)や、障害特性に配慮した措置がなされていない
●障害者の能力発揮の成果が、有為な経済活動(事業活動)へ十分活用されない
→ 利用企業において、障害者の能力発揮の成果が十分に自身の経済活動(事業活動)に活用されておらず、雇用率達成のみを目的とした雇用となっている
→ そうしたスタンスのために、利用企業内において、障害者雇用が一方的コストであるという認識に陥り、障害特性に合わせた業務切出し・職務付与等により、障害者の持てる能力の最大限の発揮を促していこうとする方向性につながらない
【制度的な対応の在り方】
●利用企業による報告
→ 障害者雇用状況報告において、一定の項目(就業場所、ビジネス事業者の情報、障害者が従事する業務内容、利用予定期間等の適正な雇用管理に係る情報)の報告を求めることにより、行政庁において網羅的に把握可能とし、必要な指導監督が行い得るようにする
●望ましい在り方に向けたガイドライン設定、事業者によるガイドラインに沿った運営に向けた対応
→ 障害者雇用に精通した一定の資格者等の配置や、障害者および利用企業への支援に従事するスタッフに対する教育訓練等の実施、利用企業に対して提供すべき支援メニューなどを盛り込んだガイドラインを設定し、ガイドラインに沿った運営を行っている旨について、定期的に情報開示を行う
●利用企業に対し、上記ガイドラインに沿っていない運営を行う事業者の利用は望ましくない旨を提示
→ 利用企業に対しては、障害者雇用の「質」として重視すべき中心的要素(法令において明示する方向で検討)(注2)を示し、上記ガイドラインに沿っていない運営を行う事業者の利用は望ましくない旨を示す
(注2)同研究会の第10回資料において、下記が示されている。
1)能力発揮の十分な促進
2)能力発揮の成果の事業活動への十分な活用
3)適正な雇用管理
4)発揮した能力に対する正当な評価とその反映
5)能力発揮に相応しい雇用の安定(安定的な雇用契約期間等)
詳細は、下記リンク先にてご確認ください。