高年齢者の労働災害防止のための指針案等が示されました
11月5日、第3回「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」が開催され、高年齢者の労働災害防止のための指針案等が示されました。
案では、次の論点について、これまで検討会で出された意見を踏まえた「対応方針」として指針案と通達で示す事項が示されています。
論点1 趣旨
論点2 安全衛生管理体制の確立等
(1)経営トップによる方針表明及び体制整備
(2)危険源の特定等のリスクアセスメントの実施
論点3 職場環境改善の事項
(1)身体能力の低下を補う設備・装置
(2)高年齢労働者の特性を考慮した作業管理
論点4 高年齢労働者の体力の把握方法
(1)健康状況の把握
(2)体力の状況の把握
(3)健康や体力の状況に関する情報の取扱い
論点5 高年齢労働者の体力に応じた対応
(1)個々の高年齢労働者の健康や体力の状況を踏まえた措置
(2)高年齢労働者の状況に応じた業務の提供
(3)心身両面にわたる健康保持増進措置
論点6 安全衛生教育
(1)高年齢労働者に対する教育
(2)管理監督者等に対する教育
論点7 労働者と協力して取り組む事項
論点8 国、関係団体等による支援
上記のうち、最も多くの意見が寄せられているのが論点4(2)で、例えば次のようなものがあります。
1 体力チェックの実施に関すること
→ 人前で運動している姿を見せたくないという意見も少なからずあって、企業が体力測定を強く推すような制度は、もう無理な面があると思う。今はオンラインが使えるので自ら体力測定をする方向に持っていかないと普及しない。いろいろなハラスメントの面もあるし、運動の好き嫌いの面もあって、経験上そのように思っている。体力を推定するにあたり、ステップテストでも質問紙でも精度は変わらないため、今後の普及のために検討事項としても良いのでは。
→ 運動だけをすればよいということではなくて、ヒヤリハットだったり教育だったりという体制整備や環境整備と組み合わせていく中に、運動の取組を職場全体でやっていく、ポピュレーションアプローチを行うための「伴走型支援」が必要。
2 体力の範囲に関すること
→ 「体力」にどこまで含まれるのか。例えば、感覚機能や認知機能の問題など、一般的に体力と言われる意味合いよりもっと広いところが高年齢労働者の労働災害防止に関わってくると思う。
3 体力チェックの対象に関すること
→ 高年齢労働者が差別的な扱いを受けないよう、また高年齢になってからでは遅く、早い段階からの対策が必要なため「全従業員年齢層を対象に」という内容を入れてほしい。
4 体力チェックの方法に関すること
→ 標準化された方法で基準値があるものとして、現行のロコモチェック、立ち上がりテストがある。高年齢労働者を対象とする場合はスクリーニングになるが、若い人は皆できてしまい、逆に、そろそろ体力が低下しているのにという人も「リスクなし」になるので、若い人でもきちんとグレードが出るような測定項目のほうがいい。
→ 全身状態については個々人の違いが非常に大きいので、体力測定等をする場合には安全に行っていただきたい。一定の基準を設けることは標準化という点では大事だが、もともと抱えている疾患、膝や腰が悪い等、そのような箇所が悪化しないよう、体力測定の方法や留意点は一言付記いただきたい。
→ 感覚器や認知機能含めた心身機能全般の測定において、基準を作るにしても一様ではなく、仕事内容に必要な能力、体力、心身機能が有るかという観点で見ないと、闇雲に必要のないものまですごく求めてしまって、高齢者の雇用を妨げてしまうようなことがあると本末転倒。
これらの意見に対し、次のように「対応方針」が示されています(抜粋)。
●体力の範囲の考え方は通達に記載する。
●体力チェックの対象について、事業場の実情に応じて高年齢者だけでなく身体機能の低下が始まりかけている若年期も含めて実施することが望ましいことを通達に記載する。
●体力チェックについて、国が標準的手法や基準値を設けることについては、指針、通達には記載せず、引き続き、検討することとして報告書に記載する。
●体力チェックに評価基準を設ける場合、高年齢者が従事する職務の内容等に照らして、合理的な水準に設定するべきであることを明確化するため、従事する職務の内容に照らす旨を指針に記載する。併せて、職場環境の改善や高年齢者の体力の向上に取り組むことが重要であること、また評価に当たっては、仕事内容に対して必要な能力等が有るかという観点にも留意する必要があることを通達に記載する。
●体力チェックを行う場合には、対象者の状況に応じて高負荷にならないように安全に十分配慮することを通達に記載する。
●体力チェックについて、転倒等リスク評価セルフチェック票に限らず、労働者が自ら体力の状況を把握できるオンラインツール、質問紙による推定等の様々な手法を活用できることを明確化するため指針に記載する。併せて、それらの手法に係る解説を通達に記載する。
詳細は、下記リンク先にてご確認ください。